ニッケイ新聞 2008年1月8日付け
「朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ――」。イタペセリカ・ダ・セーラ文化体育協会(浜田ウンベルト会長、51)は、新年祝賀会を元旦に行ない、会員ら約五十人が出席した。同文協の新年会では、一九四八年に国会で失効が決議された教育勅語が現在も奉読されることで有名。生後三カ月で移住、同地日系コロニアの生き字引ともいえる谷川清徳相談役(76)は、「奉安殿は七〇年代まであった。教育勅語を読む文協は少なくなったが、いい事が書いてある。是非将来に残していきたい」と新年を喜びながら、表情を引き締めた。
かつては、戦前の日本同様、ブラジル各地の日系コロニアで、四大節(四方拝、紀元節、天長節、明治節)のおりに奉読されていた教育勅語。
イタペセリカでは、日本と逆行するように、教育勅語が失効した戦後四八年に奉安殿が造営されている。 後に日本語学校の校庭拡張のため撤去されたが、安置されていた御真影は会館の講堂壇上に移され、教育勅語奉読は新年会の場で継続されてきた。
近隣のタボン・ダ・セーラ文体協の会長を務めた牧山栄治さん(57、二世)は、妻純子さんがイタペセリカ日本語学校で教鞭を取っているのが縁で二年前から、新年会に出席している。
「懐かしいよね。昔はどこの文協でも元旦に集まって、教育勅語を読んでいたもの。日本の歴史だし、続けていけばいいと思う」と話す。
歴代文協会長・日本語教師の顔写真が並ぶ壁には、洋装の御真影、壇上にある観音開きの中には、和装の御真影が掛けられており、教育勅語と東麒麟が置かれている。
午前十時半から会館で始まった新年会の司会は谷川相談役が務め、「東方遥拝」の発声で出席者らは一同黙礼した。
日伯両国歌の斉唱後、七三年に移住した生駒憲二郎さん(59)が壇上に上がり、恭しく教育勅語の入った桐箱を掲げ持ち、両手で広げ、朗々と奉読した。
浜田会長は、四月第四日曜日に実施される運動会を同文協の百周年事業と位置付け、「移民の苦労を大事に、移民の子孫であることを誇りに一年頑張ろう」と呼びかけた。
続けて、婦人会の高木サチエ副会長、青年会の瀬戸上フェルナンド会長、日本語学校の牧山純子教諭がそれぞれ新年のあいさつ。
梶原祥天相談役は、前市長の言葉を引き合いに出し、「色んな国の移民がいたが、コロニアが残っているのは日系だけ」と強調、日本文化と精神の継承を訴えた。
「一月一日」の合唱で新年会は終了。続いて行なわれた祝賀会で出席者らは、持ち寄りの食事に舌鼓を打ちながら、年の初めを喜んでいた。