ニッケイ新聞 2008年1月10日付け
増税はしないと言っておきながら、年末年始にかけて、暫定金融取引税(CPMF、通称小切手税)廃止による税収不足穴埋めの諸策を打ち出してきた政府だが、それを阻もうと野党が活発に動き始めている。
政府の対策は経費削減と増税であるが、具体的には、個人口座で半年間に五〇〇〇レアル以上(企業の場合は一万レアル)の動きのあった場合、銀行から口座所有者の情報提出を義務化し(十二月二十九日付伯字紙)、年明けと同時に金融取引税(IOF)と純益に対する社会納付金(CSLL)の税率アップを発表した(三日付伯字紙)。
八日付フォーリャ紙は、大統領自らがラジオ放送で、立法、司法、行政の三権で経費削減することで二〇〇億レアル、IOFとCSLLのアップで一〇〇億レアル、経済成長等による税収増で一〇〇億レアルと計算すれば、CPMFで空いた三八〇億レアルの穴は埋まると説明。この放送により初めて、大統領自らが経費削減目標等を明言したことになる。
これら一連の動きに対して、野党側からは、議会休会中の緊急審議を行う議会代表委員会への審議案上程と、最高裁への憲法違反直接訴訟とがなされた。
九日のフォーリャ紙によれば、議会代表委員会への審議案上程は、社会大衆党(PPS)のジャルディン議員によるものと、ブラジル民主社会党(PSDB)によるもの。ジャルディン氏は口座の情報報告義務はプライバシー侵害であるとその廃止を求める案件を三日に上程。また、PSDBはIOFの税率アップを、市場の動きを調整する機能を持つ税を税収増の目的だけで税率調整することは不当として八日に代表委員会宛ての書類を送付。
これに対し、代表委員会は、これらの案件審議は二月の議会再開後とする判断を出したが、政府とのIOFとCSLLについての公開討論を行うことについては許可した。
また、DEMについてはは、九日付伯字紙が、IOFの税率アップは対象者による税率に差があることや、分割払いを多用する低所得者層への負担増となることを不当とした直接訴訟を七日に、政府が税率を上げたCSLLを今年から徴収するというのは、法手続き上不可能で、政府が実際に一五%のCSLLを徴収できるのは二〇〇九年からであるはずとするとともに、社会的な納付金を政府の行政資金とすることは不当とする訴訟を八日に提出したと報道。最高裁は、政府に対し、一〇日以内に説明することを求めた。
この他、経費削減はしないと言っていた経済活性化計画(PAC)の経費削減の検討が始まったり、三権内からの不満や与党側からの疑問の声も上がってきたりと、政府調整は難航しそうな風向きである。