ニッケイ新聞 2008年1月11日付け
十日付けエスタード紙に、国立宇宙調査研究院(INPE)がベレンに衛星監視による全世界の熱帯雨林監視センターを開設することが報じられた。ブラジルはアマゾンでの二十年にわたる熱帯雨林監視の経験があり、センターは、世界的衛星監視システムの中心として森林破壊の実態監視と共に、訓練の場としても機能することになるという。また、現在INPEが利用している衛星CBERSについて、情報収集用アンテナは南アフリカにもあるが、中期計画としてアンテナを六基増設し、世界中のポイントを二日半毎に監視できるようにすると言う。
INPEは、世界の温暖化ガス排出の二〇%は熱帯雨林の破壊や焼失が原因といわれるが、京都議定書後の温暖化ガス削減目標値作成のための熱帯雨林に関するデータとしては、信頼に値するものはブラジルが集めてきたものだけだという。また、衛星による高解析度の情報は開発途上国や企業が利用できるようにするという。センターの建設用地は既に確保されたが、建設は小切手税廃止で国家予算が確定しておらず、時期が確定されていない。
また、アマゾンの監視活動は衛星によるものだけではなく、何カ所かに鉄塔を建て、雨量や二酸化炭素量、湿度などを計測したりする形でも行われているが、この鉄塔による監視システムが、サンパウロ州などの海岸沿いに広がる大西洋岸森林(マッタ・アトランティコ)でも応用され始めた。
大西洋岸森林については、十二月三十日と今月二日のエスタード紙が報じているが、本来は一二〇万平方キロもあった森林帯は、いまやわずか七%しか残っていない。また、このまま温暖化が進めば、アマゾン以上に豊かで変化に富む生態系はどんどん破壊され、気温が四度上がった場合には、今後四〇年の間に何十種類もの植物が半減するという。また、最良の解決法は各々の種に最適の環境の場所に移し変えることだというが、この地域にしか存在しない植物系や動物系など、移植や移動の出来ないものもあるという。
二日付けエスタード紙には、大西洋岸森林の一部であるセーラ・ド・マルサンパウロ州立公園は「人の手からは守られているが、温暖化には無防備」と。気付かないうちに進む温暖化とそれに伴う環境破壊の恐ろしさでもあるが、ここではINPEを含む四つの機関が協力して、動植物の生態系の詳細な調査をすると共に、鉄塔による自然環境の監視、観測が継続されている。