ニッケイ新聞 2008年1月12日付け
「パン人間」など独自のパフォーマンスを世界各地でおこない、サンパウロ・ビエンナーレなどにも参加し、国際的な評価を受けている日本人アーティスト、折元立身(61、たつみ)さんの「折元立身回顧展」が今月十一日からサンパウロ美術館で行われている。期間は四月二十七日まで。
展示会場ではアルツハイマーを患う母親との〃対話〃を記録した千二百枚に及ぶ写真やビデオクリップなどを紹介。母親にタイヤを首にかけた特大写真、巨大な特製の靴を母親に履かせて歩かせた様子を映したビデオクリップ、初の発表となるスケッチ画などもあり、会場は折元ワールド一色に包まれている。
十日夜に開かれたオープニングセレモニーでは、「おばあちゃんたちに感謝の気持ちを表現したい」と、五十人の日系女性を招いて、茶釜飯を振舞うパフォーマンスを披露。ブラジル・メディアの取材陣や来場者を驚かせた。カサビサンパウロ市市長も鑑賞した。食事後は、自分の写真のギャラリーを参加者と歩きながら説明を加えた。
続いてパン人間のパフォーマンスを参加者の女性とともに実演。折元さんは、パンがキリスト教でいう肉にあたり、それを体に身につけることで、生きた彫刻を表現できると説明。「皆さんも長生きしてね。息子さんが面倒みてくれるから」と茶目っ気たっぷりで話していた。
パン人間をみた参加者の西中昌子さん(73、一世)は「これがアートってものなんでしょうね。私たちがやったらただの変人になるでしょうけど」と笑っていた。また佐藤さちこアリセさん(47、三世、サンパウロ市出身)は茶釜飯を「あんなに小さいなカボチャがあるんだなって驚いた。青い豆の入ったご飯も美味しかったし、ブッロコリーも美味しかった」と満面の笑みで語った。