ニッケイ新聞 2008年1月15日付け
世界的に温暖化ガスの排出や森林破壊の規制の動きが強まっている中で、森林破壊の容認を求める動きがブラジル政府に圧力をかけてきている。
十三日フォーリャ紙によると、問題の動きは、アマゾンの牧畜ならびに食肉加工業界、また、それらの産業で潤う自治体の有力者たちからのもので、所有地の二〇%までは森林伐採をしてもよいという現行規準を五〇%までに引上げるよう求めている。これは、現行法の基準を超えた場合、その土地から産する木材や家畜の売買や運送、新たな買付けなどは禁じられ、土地の再登記の際、違反が指摘されれば高額の罰金を払わなければならないなどの規制があるため。
フォーリャ紙によると、パラー州では一つの食肉加工場が一日平均一〇〇〇頭を殺して加工。森林破壊の進む自治体の一つサン・フェリックス・ド・シングーでは、自治体面積一万四五〇〇平方メートルの大部分の森林が既に伐採され、一七〇万頭の牛を飼っている。人口一人当たり三〇頭の牛だが、この数字は全伯平均の三倍にあたるアマゾン地域平均の一〇倍。また、アマゾン全域では、二〇〇三年~〇六年の国内家畜増加量の九六%が集中しており、この地域は世界一を誇るブラジルの牛肉輸出の三分の一を担っている。
しかし、この食肉輸出の増加は、アマゾンの森林破壊に直結している。十二月二十二日のエスタード紙では政府が八月から十一月にかけての森林破壊が前年同期比で一〇%増えていることを憂慮しており、破壊率の高い自治体リストを作ると共に罰金の強化などを考えていると報道。森林の破壊要因として大豆やサトウキビの栽培地や牧用地の拡張が考えられるとしていたが、十三日のフォーリャ紙では、牧用地は目に見えて拡張されているという。
十二月二十二日のフォーリャ紙には、森林破壊のピッチが上がったことを懸念する大統領が、一六閣僚による気候変化に関する国家計画作成委員会設立のための大統領令署名と報じられてもいたが、委員会の具体的な活動開始前に酪農家や企業家たちが圧力をかけてきている状態といえる。
アマゾン地域の酪農家らへの銀行貸付金は補助金がつくため低金利だが、この貸付金を森林伐採に用いることは禁じられており、酪農家らは自費で森林を切り開いて貸付金で牛を買って増やすという。牧草地を回復させるよりも新しい牧草地を作るほうが安上がりだというのだが、経済活動活性化という視点と環境保全も考えた健全な発展という視点をどうやって調和させるのかは、政府が直面すべき問題の一つといえる。