ニッケイ新聞 2008年1月17日付け
キューバを訪問中のルーラ大統領は十五日、「キューバの政治システムで是非を論じることはできない。他人のことを論じる者は、恥をかく」と述べ、シティ・グループが〇七年の第4四半期に九十八億ドルの赤字を計上し、米経済にリセッションの恐怖を煽ったことを皮肉った。「米国際金融は口数が多く自分の実力を見せる番になると、この体たらくである。イザとなれば、彼らは口ほどもないのだ」と酷評した。
ルーラ大統領は、キューバ批判にかこつけてシティバンクをこき下ろし、カストロ政治の開放につなげようとしたらしい。ブラジルは、反キューバの花火を打ち上げる考えはないし、同国に関する人権問題にも触れないと述べた。シティバンク本店は、ルーラ批判に対し看過するとブラジル支店へ通達した。
十五日の金融市場は世界同時安で、火元はシティの不動産サブプライムによる百億ドル近い欠損だ。同行は一九九八年、トラベラーズ・グループと合併し世界でも指折りの大手銀となった。第4四半期赤字決算は十七振り、同行百九十六年の歴史で最大の欠損という。それでも総決算では、まだ黒字らしい。
ルーラ大統領のキューバ訪問で人権問題に関し、ブラジルの対応が話題になった。キューバ人ボクサー二人がパン大会への参加を口実に出国しブラジルへ不法滞在をしたので、ブラジル当局は拘束し強制送還をした。もう一つは、ミュージシャン三人が、連邦警察へ亡命を求めたこと。
国際環境が反キューバを形成する中、それに調子を合わせるようなことはしないと大統領がいった。ボクサーは不法滞在であったので、法に従っただけという。ミュージシャンの亡命は、検討中のようだ。
ルーラ大統領は一時期、キューバ通いをしたことがあり、カストロ首相に世話になった恩がある。病床にカストロ首相を見舞い、衛生管理と薬品供与の協定を結んだ。また一億ドルの即時クレジットと食糧輸出で一億ドルの借款供与を見舞いに進呈した。ペトロブラスは、キューバ石油公団Cupetと海底油田開発や原油精製、潤滑油製造の三契約を締結した。