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有機栽培か遺伝子組換えか=手間や経費で計れぬ健康

ニッケイ新聞 2008年1月17日付け

 最近は大手スーパーでも有機栽培野菜コーナーが出来たりしているが、食の安全を求める動きと、遺伝子組換え食品の普及と言う二つの相反する動きがある。
 まず、有機栽培食品だが、「オルガニコ」と銘うたれた食品は、化学肥料や農薬を使わず、遺伝子組換えもされていない物に限定される。したがって、動物の場合も、化学肥料などを使わずに育てた野菜などをえさにしており、ホルモン剤などの投与もされていない。また、こういった野菜や果物、食肉を加工した物も有機食品である。
 こういった食品は当然、育成に手間と時間がかかる。除草剤をかければ済む所を人の手で除草し、ホルモン剤を使えば成長が早いのに、自然の成長を待つ。しかし、自然に育まれた味と栄養価、安全性は、化学物質を投与したものとは比べ物にならない。
 この特性ゆえに、有機食品市場は成長産業の一つでもあるが、十六日エスタード紙には、有機食品であることを証明するマークが作られるとの記事。同時に、スーパーなどに四月から有機鶏肉販売コーナーお目見えとの報も。鶏肉の場合、普通の鶏肉の出荷までは四五日の所が一〇〇日。価格もトウモロコシの需要過熱でえさが高騰などの理由で、普通の鶏肉がキロ三レアルで買えても有機鶏はキロ一五レアルかかる。もちろん、えさのトウモロコシも有機栽培で遺伝子組換えのされていないものに限られる。
 一方、遺伝子組換え食品は、五年前から表示の必要が言われながら、一%に満たないなどの理由で無視されてきたが、昨年十一月から、ブンジェ社が大豆油(ソヤとプリモル)のラベルに三角で囲んだTのマークと「遺伝子組換え大豆使用製品」の表示を入れるようになった。この他にも、遺伝子組換え大豆を使用している企業はあるのだが、ラベル表示についての問い合わせには「回答できません」との答えだったと十五日のエスタード紙。
 十五日のフォーリャ紙には、パラナ州では大豆畑の四八%が遺伝子組換え種栽培と報じられたが、同日のエスタード紙によれば、ブラジルの大豆栽培の六五%は遺伝子組換え種だという。また、ハムなど、工場生産される商品の約七割は大豆または大豆加工品を原材料として使用していることを考えると、遺伝子組換え大豆を使用しているものは予想以上に多いはずである。
 また、十六日伯字紙に、米国食品医薬品局がクローン技術により誕生した牛、豚、ヤギとその子孫についてその安全性を確認したとの記事があったが、遺伝子組換え食品共々、経済性や、食糧危機に備えるといった議論以上に、安全性についてのさらなる調査と、消費者の不安解消への努力が必要といえそうだ。