ニッケイ新聞 2008年1月18日付け
日本とブラジルの一流音楽家による「日伯伝統音楽の夕べ~日伯交流年・日本人移住百周年オープニングイベント~」(サンパウロ総領事館主催)が十六日夜、サンパウロ市イビラプエラ講堂でおこなわれ、迫力ある日伯伝統音楽の融合の調べに満員の会場は感動の渦に包まれた。事前に配布された整理券がわずか二時間でなくなるほどの人気と注目を集めた同公演。会場には日系団体の関係者や駐在の日本人、非日系のブラジル人など八百人近い聴衆が詰め掛け、公演後には「これこそが日伯交流の象徴だ」とした絶賛の声が多数聞かれるなど、移民百周年・日伯交流年の本格的な幕開けをつげる記念すべき公演となった。
同公演には三味線奏者として純邦楽界から高い評価を受ける上妻宏光氏と伝統音楽とポップを融合したグループ「Rin‘(りん)」が日本から参加。ブラジルからは天才ギタリストとして名高いヤマンドゥ・コスタ氏と、流儀や伝統にとらわれない新しいスタイルで独特の演奏を作り出すアミウトン・ジ・オランダ氏(マンドリン)が出演、それぞれが迫力と繊細さを兼ね備えた一流の演奏を披露した。
「土の響き」「聲」「地球の声」と大きく書かれた垂れ帯を背景に、赤、青、緑の優美な和の装束をまとったRin‘のメンバーがはじめに登場。ポップなメロディーに琴と尺八の迫力ある音色を融合させた演奏で会場を魅了したほか、日本を故郷にする移住者らにと「さくら」を息の合った美しいハーモニーで歌い上げた。
続いてヤマンドゥ・コスタとミウトン・ジ・オランダ氏が巧みな演奏技術でデュエットし、聴衆を圧倒した。「今回は皆さんとご一緒できて嬉しいです」(ヤマンドゥ氏)、「(次は移民)二百周年を期待しています」(アミウトン氏)と日語であいさつし、移民百周年をパラベンスと祝福した。
十五歳で全日本津軽三味線競技大会最年少優勝を飾り、欧米などの著名な音楽家と数多く共演している上妻さんは、「津軽あいや節」の演奏を皮切りに、ピアニストの野崎洋一氏とともに、リズム感あふれる独創的な音色を奏でた。〃津軽三味線の伝統と革新〃をスタイルにする同氏の演奏に、会場は大きな拍手をもって称えた。
公演最後には、上妻氏、アミルトン・ヤマンドゥのセッションに続いて、Rin‘のメンバーを加えてボッサ・ノバの名曲「Mas que nada」を披露。アンコールで「ふるさと」が演奏されると、会場からは自然と歌声が聞かれた。さらにクライマックスには黒の舞台背景が全開になり、イビラプエラ公園の木々が背景に浮かび上がると、会場の感動と興奮は最高潮に達した。聴衆全員がスタンディングオベーションをもって称え、日伯の演奏家は肩を組み何度も礼をして応えた。
公演後に演奏者のCDを買っていた大庭乙絵さん(26、準二世、サンパウロ市在住)は「本当によかった。最初はどんな風に日本とブラジルの音色が調和されるのかと思ったけど、期待を上回る演奏でした」と感動さめやらない様子で話していた。