ニッケイ新聞 2008年1月18日付け
遠くて近い国――こんな言い方がある。ブラジルと日本の関係が、そう言われたりする。実質はともかくとして…。日本と中国は、近年「近くて近い国」である。距離的に近く、特に産業経済関係が緊密になるにしたがい、他の分野でも中国を重要なパートナーと見る人たちはますます増える傾向だ▼京都外国語大学が昨年開催した全国高校生中国語スピーチコンテストは十一回目だった。ちょっとした驚き。そんなに以前からやっていたなんて、である。同大学は先を読んでいるのであろう。青田刈りでなく「苗の育成」だと思う。将来、中国語をあやつれる人材は何人いても多いということはないとの見通しなのだ。各方面からの要請なのかもしれない。大学の中国語科もおそらく大繁盛にちがいない▼もう一つ「おッ」と思ったことがあった。このコンテストで、沖縄県の向陽高校一年生が初級の部で一位、二位を占めた。同校には「国際文科」があり、国内および国際社会で活躍できる人材を育成するため、英語と中国語コースを設置している▼沖縄県の高校生は、もしポ語のコンテストがあれば、出場するだろうか。ブラジルと地縁、血縁が強固で「遠くて近い」とされる沖縄県においても、授業にポ語を採用しているところはないだろう。だから、学んでいない。需要、供給の関係だ、などといえば、ミもフタもないが、それが現実というもの▼ここは、地縁、血縁が強固なら言うことはないではないか、のあたりに留めておこう。(神)