ニッケイ新聞 2008年1月19日付け
〔共同〕日系ブラジル人など外国人が急増している自治体で「外国人住民台帳制度」の創設を求める声が強まっている。現行の外国人登録制度は個人単位の登録で世帯の状況を反映しない上、転出届の義務もなく教育や健康保険など行政サービスの基礎資料としては不備だらけ。国は重い腰を上げ、三年がかりで制度の見直しを始めた。
▽所在が分からない
外国人が人口の約一六%を占める群馬県大泉町は二〇〇二年、全国に先駆けて学齢期に学校に行かない不就学児童の実態を調査。外国人登録をしている子ども六百二十二人のうち、百六十人は転出や帰国などのため、町にいないことが判明した。
「子どもが突然、学校に来なくなり、家に行くと引っ越したあと。その後の足取り調査は難しい」と大泉北小学校の山田恵美子教頭は頭を抱える。「子どもの指導要録を転校先に送ることもできず、教育が寸断される」
町で多文化共生政策を担当する広報国際課の加藤博恵主幹は「たとえ外国人の新住所が分かっても本人が申請しない限り、自治体が登録を変更できない」と現行制度の不備を訴える。
文部科学省も〇五―〇六年に調査を実施。日系外国人が多い十二自治体で外国人登録がある子ども九千八百八十九人中、実際は千七百三十二人が居住していなかった。
▽外国人台帳整備を
外国人の多い二十三市町で作る「外国人集住都市会議」は〇一年の発足以来、外国人登録制度の改善を要求。昨年十一月に岐阜県美濃加茂市で開かれた会議でも「外国人を住民としてとらえ、日本人と同じように情報を記録する外国人住民台帳制度の創設を強く要望する」と訴えた。
在日外国人の数が二百万人を超える中、国は昨年六月、〇九年の通常国会までに外国人登録制度を見直し、関係法案を提出する方針を閣議決定した。法務省と総務省が今年八月ごろまでに、住民基本台帳制度を参考に、外国人の住民台帳整備に向け原案を作成する見通しだ。
在日外国人問題に詳しい田中宏龍谷大教授は「行政サービスを目的とした住民基本台帳から外国人はこれまで除かれていた。外国人登録法はあくまで外国人管理が目的。サービスと管理をどう一緒にして外国人住民台帳をつくるのか、国の動きに注目したい」と話している。