ニッケイ新聞 2008年1月22日付け
緑の黄金郷といわれたアルコール産業に価格の下落と輸出の陰り、投資の中止という異変が起きている。
エタノール精製の二十五新プロジェクトは、延期または見直しを余儀なくされて中止した。現在既に稼動中のものが三百六十七カ所、二〇〇八年完成するものが二十九カ所ある。
アルコール輸出は二〇〇七年、二〇〇六年の三十六億リットルから一四%減の三十二億リットルへ落ちた。五十億リットルの生産が目標であったが、米経済の落ち込みにより挫折。現状が続くなら二〇一〇年、一〇%の生産過剰になる見込みとなった。
アルコール業者は十年前、「アグリビジネスの泥棒」と呼ばれた。昨年七月はルーラ大統領から「国家の英雄」という称号を貰った。誰もアルコールの将来性を疑うものはなかったが、投資家はアクセルから足を離した。あとは原油価格の上昇を待つしか、手はないようだ。
政府は二〇一六年、アルコールの消費量がガソリンを超過する計画を立てていた。アルコール混入のガソリン消費は二〇〇七年、三倍に増えた。自動車もフレックス車が、九〇%を占めるようになった。
政府はアルコールの将来について輸出の陰りを感じていたとし、手放しで喜んでいたわけではないという。アルコール産業の落ち込みは、サトウキビ栽培者の間でも認識している。今年植え付けるサトウキビの二〇〇九年度相場は、下落が予想される。
新規操業に入った精製所は、まだ運転資金や投資家への配当金手当てなどをしていない。運転資金が充分でないプロジェクトは、実施困難の見通しとなった。水和アルコールの価格は、昨年六月の一・二五レアルをピークに十八日、〇・七一レアルへ下落した。
アルコール産業の陰りは顕著でも、サトウキビの収穫は史上最高の二百五十万トンだ。アルコール成金を夢見たものには悲哀の幻滅であるが、まだ何が起きるか分からないと関係者はいう。原油百ドル時代に入り、世界情勢は平和に向かうのか、紛争で混迷するのか不確定時代と見ている。