ニッケイ新聞 2008年1月22日付け
ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)主催の新年会が十一日、サンパウロ市内の日系ホテルで開かれ、昨年八月に実施した「移民百周年に関する総合調査」の途中経過について、田中会頭は会員日本企業が百周年に対して「応分の協力をしたい」考えであることを明らかにした。そのうえで、百周年協会の役員から免税恩典などの具体的な説明が足りず、企業側が支援に踏み切れない状態にあると指摘。現状で寄付の依頼を受けた会員企業が全体の四分の一ほどしかない実態を述べた。また、九五年に同会議所が音頭をとって設立した日伯修交百年記念基金の百周年事業への活用についても、「納得できるよいプロジェクトがあれば支援したい」とする考えを改めて示した。
田中会頭は冒頭のあいさつで、会員日本企業が何らかの形で百周年に協力したい意向にあるとしたうえで、各企業が百周年協会の記念事業全体に一括で寄付するよりも、記念事業の中から対象プロジェクトを選別して寄付したい考えにあることを紹介。また寄付の対象や金額もそれぞれの企業が独自に決定すべきとの意見が多数、とした。
さらに寄付にあたっての問題にふれて、「協会のしかるべき人物が企業のトップを訪問して依頼したというケースが数えるほど」「百年協会から寄付の依頼を受けた企業は全体の二五%ほど」と指摘。
加えて寄付による企業の免税恩典などについても百周年協会から納得する説明が得られないために、寄付金振込みの期限切れになったり、寄付金振込口座さえも知らない企業が多い実態を説明した。「会員企業の中で寄付を実行した会社は現在でも数えるほどしかありません」。
またこれらの調査回答の中には、支援プロジェクトの進捗状況の報告や、独立会計監査法人の監査を定款で義務づけて、会計の透明性や公明性を求める意見が強かったと述べた。
これらの報告をうけて、新年会の最後にあいさつした松尾治百周年協会執行委員長は、「資金集めが遅れているのはご存知のこと」と前置きし、「早いうちにも吉岡黎明コーディネーター、上原幸啓百周年協会理事長といっしょに資金協力のお願いにあがりたい」と話した。西林万寿夫サンパウロ総領事も、百周年祭典協会関係者の訪問があれば「前向きに対応してほしい」と参加者に要請した。
このほかには、会議所が中心となり設立した日伯修交百年記念基金の活用について、支援事業の決定は日系五団体の代表者全員の承認が必要とした。〇三年以来、基金は移民百周年の記念事業に使用すると定め、現在まで基金の蓄積を続けている。関係者によれば今のところ、百七十万レアルまで貯まっているという。
一連の報告から、同会議所の百周年事業に対する立場としては、九五年当時のように会頭自身がリーダーシップを取って割当方式で企業から資金集めをする考えにはなく、あくまで現実的な記念事業に対して現存の基金から支援を行いたい意向だ。また会員企業にはそれぞれが納得する記念事業があれば、積極的に寄付などをしてほしいと考えているようだ。