ニッケイ新聞 2008年1月22日付け
中国地方出身者やその子弟を中心につくるブラジル神楽保存会(道管武保会長=62、安芸高田市出身、会員二十五人)に技術指導するため、島根県益田市の石見神楽神和会(三原董充会長)のメンバー三人が十七日にブラジル入りし、練習で汗を流している。
指導にあたるのは、石見神楽久々茂保存会会長でもある三原さん(64)、同保存会副会長の日比勇さん(64)、高津神楽社中代表の藤原澄男さん(74)。
三人は今月三十一日までの滞在中、指導の合間を縫い、ワークショップや日系福祉施設での慈善公演も行なう。
練習場となったブラジル広島県人会文化センター内のホールで十八日夜、約二十人が太鼓や舞などグループに分かれて最初の指導を受けた。
三原さんは、「みな熱心だし物覚えがいい」と感触を話し、「ゆっくりしたテンポから、段々と早くなるのが石見神楽の味。しっかり身につけてほしい」と笑顔で汗をぬぐった。
知人の紹介で三年前から、神楽を始めた非日系のリジア・マイアラさん(15)は、「本場の人から教えてもらえるのは嬉しい。近々公演もあるので一生懸命取り組みたい」と真剣な表情を見せていた。
〇六年にサンパウロ市であった島根県人会創立五十周年式典に出席した訪問団から、同保存会の衣装不足を聞いた親和会のメンバー
は、「ブラジルに神楽があるなんて」と驚きながらも、「神楽普及の助けになれば」と、地元で毎週日曜日に行なわれる『石見の夜神楽定期公演』やラジオ報道などで衣装の寄付や募金を呼びかけた。
今回のコーディネーター役を務める島根県芸術文化センター・グラントワの木原義博さん(45)によれば、県移住家族会、他県からの協力もあり、七十六万円が集まり、新しい衣装の購入などに充てたという。
昨年四月、益田市で神楽の衣装、道具など百四十四点を贈呈された同神楽保存会の古田川英雄さん(65、松江出身)がブラジルでの指導を依頼、国際交流基金の援助を受け、今回の訪問に繋がった。
今年はブラジルに日本人が移住して百年を迎えることから、六月にサンパウロ市で行なわれる日本文化芸能祭に同保存会は出演を予定している。
古田川さんは、「しっかり練習して、百周年にいい舞台ができれば」と話し、ブラジルでの神楽継承にも期待を込めた。
なお、サンパウロ市パライゾ区のサンパウロ文化センター(R,VERGUEIRO 1000)で練習の成果を見せる神楽公演が今月二十七日午後三時から行なわれる。
詳しくは広島県人会(電話=11・3207・5476)まで。