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時代の流れに逆行か=大学の人種・社会特別枠拒否

ニッケイ新聞 2008年1月23日付け

 一月二十一日が宗教的偏狭と戦う日と制定されたその日、黒人や公立高校からの受験生に対して特別枠を設けている大学の一つであるサンタカタリーナ連邦大学(UFSC)に対し、合格者選考は、平等をうたう憲法にのっとり、得点によってのみなされるべきとの司法判断が下された。
 実は、十九日のエスタード紙によれば、パラナ連邦大学(UFPR)を受験し、特別枠のせいで入学できなかった学生が、特別枠導入にあたり大学と地域との開かれた討論の場がなかったことを不服として訴え、地裁で勝訴したばかり。同日の記事では特別枠の導入後、第一審で勝訴した四件目の例と書かれていたが、二〇〇二年に特別枠を導入したリオ連邦大学では二〇〇件近い訴訟がなされてきたともいう。
 問題の特別枠は現在、国立、州立大学のうち五二の大学が採用。大学毎に特別枠の内容が違い、受験時に公立高校出身者には何%かの得点の上乗せをする例や、黒人や公立高校出身者に一〇%~二〇%の枠を与える所まで様々である。
 ちなみにUFSCは公立高校出身者に二〇%、黒人に一〇%、UFPRは公立高校出身者に二〇%、黒人にも二〇%の枠を与えている。また、アラゴアス連邦大学(UFAL)のように、通常枠の学生と特別枠の学生の得点がほぼ同じになったため特別枠を廃止し始めた所もある。
 二十二日のエスタード紙は、UFSCの件を受け、人種間差別などを無くすためにと、特別枠導入について検討してきた五〇以上の公立大学の話合いを無視したものと批判すると共に、政府主導で進められてきた黒人やインディオに対する教育や就職面での不平等撲滅の動きに逆行するものとなりうるとした。
 黒人運動については二十日のエスタード紙でも触れられていたが、前政権時代から、黒人の権利を認め、黒人の文化や歴史にもっと目を向けていく姿勢が明らかにされ、いくつかの法令も出されたことや、大学の特別枠設定もこれら一連の動きの中で出てきたものであることが書かれていた。
 公立高校出身者については、公立高校と私立高校の学生間の学力差という問題がある。経済力が無いために私立校で学ぶことが出来なかった学生が、学力差のために大学への道を閉ざされてしまうという悪循環を断ち切るために設定された枠は、社会経済的理由による枠といえる。
 インディオに対する枠もいくつかの大学で設けられているが、黒人と同様、社会的、歴史的要因から高等教育への道が狭められていた人々への配慮を、法の下での平等の一言で違憲とする司法判断は今後も論議を呼びそうである。
 UFPRもUFSCも上訴するつもりだという。