ニッケイ新聞 2008年1月23日付け
世界の金融アナリストは、米国発の金融パニックについて危機脱出法を検討している。先進国の金融市場を錯乱している金融パニックに、ブラジルなど途上国がどこまで耐えられるかとミング経済研究所が次の論説を発表した。
九〇年代の金融パニックには、二つの見方があった。一は米国がクシャミをしたら、世界は肺炎になるという。二は金融パニックがブラジルやメキシコなどの途上国で起きるなら、世界は肺炎になる心配はないとされたものだ。
しかし、これは昔の話である。今は途上国が免疫力を養い、先進国の風邪に煩わされなくなったことだ。ブラジルは輸出が落ち込んでも、自国の消費で国内経済を運営できるようになった。さらに国内生産で、先進国よりも付加価値を生み出すことができる。
ルーラ大統領は、ブラジルが世界経済に振り回されることなく経済運営ができることを気づいたようだ。ブラジル丸は、荒波に呑まれないように舵取りに万全を期していると述べた。メイレーレス中銀総裁も、同じことをいった。
ブラジル経済は免疫システムを活かして、米国の強力なウイルスを撃退するという。要するに生産経済と金融経済は、別物なのだ。金融経済のウイルスで、生産経済は病まないのだ。生産経済と金融経済の生産消費が、異なることをよく認識すべきである。
生産経済も金融経済もグローバル化されているが、特に世界の金融経済は完全に米国投資家の手中にある。だから米国の金融パニックは、ブラジルの金融市場にも影響を及ぼす。ブラジルは金融市場で資金調達をしているので、米国の金融危機からは解放されているとはいえない。
ブラジルの生産経済に焦点を当てるなら、話は別だ。十一日のエコノミスト誌は「中国経済は、輸出に頼り過ぎているという神話がある。それは間違いだ」と警鐘を鳴らした。スイス銀行の調査では、中国の輸出がGDP(国内総生産)の三五%以下だという。それでも計算は甘い。実際はGDPの一〇%位だ。
これは不沈空母「米国経済」が沈没しても、中国は痛くも痒くもないということ。中国は二〇〇八年、経済成長率を例年の一三%を減らし、九%か一〇%に留めると思われる。
コモディテイ市場で食糧と金属が、なぜ高騰したか。これは途上国経済が、先進国経済の世話にならないで自活するために採った途上国の知恵である。