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サントス日本語学校に草の根資金=日本文化センターとして再生へ=「移民の日」までに完成を=苦難の歴史、建物老朽=約8万6千ドルで改修

ニッケイ新聞 2008年1月29日付け

 【既報関連】第二次大戦中に接収、〇六年に六十三年ぶりに返還された旧サントス日本語学校校舎の改修のため、日本政府からサントス日本人会に草の根文化無償資金が供与されることが決まり、二十四日、関係者出席のもと在聖総領事館で署名式が行なわれた。供与額は八万五千九百八十八ドル(約十五万三千レアル)。建物の改修費用に充てられ、工事終了後は日本語学校を備えた日本文化センターとして再開する計画だ。ブラジル日系社会の苦難の時代の象徴ともいえる同校舎は、移民百年を機に日本文化の発信基地として生まれ変わる。遠藤浩サントス日本人会長は「移民の日までに完成し、記念式典をしたい」と意気込みを見せている。

 サントス日本語学校は、一九二八年ごろに結成されたサントス日本人会の経営により始まった。三九年には同日本人会が正式登録され、最盛期には二百人以上の生徒が通ったが、四三年、同地在住日本人の強制立ち退きにともない敵性資産として接収された。
 戦後、地元日系社会、市長をつとめたテルマ・デ・ソウザ連議など関係者による返還運動を経て、〇六年、連邦国有財産局とサントス日本人会の間で敷地使用権を認める契約が署名され、六十三年ぶりに日系社会の手に戻ったのは記憶に新しい。〇六年には来伯した扇千景参院議長(当時)も訪れている。
 接収中は陸軍の管理センターとして使用されていたが、長年の間に老朽化が進んでいたことから、改修のため草の根資金が供与されることになった。
 署名式にはサントス日本人会から遠藤浩会長、土井紀文セルジオ副会長、深美モリオ・パウロ理事、丹治七郎渉外ら役員が出席。西林万寿夫総領事と遠藤会長が供与書類に署名し、固い握手を交わした。
 西林総領事は返還運動を振り返り、「日本人会、サントス日系社会の関係者が一致団結した粘り強い運動の結果」と称賛。返還後、雨漏りなど老朽化した現実を知り「修復が絶対に必要だと感じた」と述べ、「非常に嬉しく思う」と供与決定の感想を語った。
 さらにブラジリアでの日伯交流年開幕セレモニーの席上、サントス出身のアモリン外相が同校舎の返還を「日伯融合のシンボル」と表したことに触れ、「サントスの日系社会にとって歴史的な学校が、百周年を機会に改修、再開されることは象徴的、重要な事業になる」と強調。「日伯友好・交流の場として、また日本文化の発信基地としての役割に期待している」とエールを送った。
 遠藤会長は総領事館、日本政府へ謝意を表すとともに、「世話になった人たちが恥をかかない建物を造り、日本文化を主にスポーツなど幅広く行なっていきたい」と決意を語った。
 今回の改修工事は、屋根、壁、床の改修から水回り・電気配線まで建物全体を修復し、日本語コースの教室、カフェテリアなどを設置する計画。終了後、同校舎は多目的日本文化センターとして再開される。
 遠藤会長は「六月の移民の日までに完成し、記念式典を行ないたいと考えている」と決意を表した。そして「今後も皆さんの力を借りないといけません。百周年を機に、明日に向かって実行していきたい」と話した。