ニッケイ新聞 2008年2月2日付け
ブラジル牛肉の最大の輸出先である欧州連合(EU)が本日から牛肉の輸入中止を決めたことが一月三十一日付け伯字紙に報じられた。
EU側の求める肉牛の管理体制についてのブラジル側の認識の甘さが招いた結果と言えるが、輸入中止の決め手となったのは、ブラジルが提出した農場リスト。EU側は過去の視察やブラジル関係者らの話などから、全伯の農場の三%(約三〇〇戸)のみがEUの要求する設備や環境を整えていると考えていたが、ブラジル政府が提出したリストには二七〇〇戸もの農場が記載されていた。
このリストは、州知事らの圧力によって作られたもの。ミナス・ジェライス州だけが準備された一三〇〇戸のリストを事前に提出していたが、一日のエスタード紙は二十八日のEU側との協議の場で三〇〇〇戸のリストがFAXで送られ、削った結果が二七〇〇戸だったと報じている。
EU側の要求では、EUが輸入する牛肉は、四〇日以上その農場で飼育され、さらに口蹄疫の発生報告のない州で九〇日以上飼育されていることの証明できる牛のもの。したがって、過去二年間に口蹄疫の発生が確認されているサンパウロ州や南マット・グロッソ州は除外されるが、ブラジル政府からのリストは十分な調整がされていなかったとも言う。
これは、どうせEU側が譲歩すると考えたブラジル側関係者たちの認識の甘さ。EU内の牧畜家からの圧力もある中で、ブラジル政府に真摯な態度が欠けていることに痺れをきらせたEUの輸入中止決定だったといえる。
政府は、牛肉の品質の問題で中止されたものではなく、リストの問題としながらも、輸入再開までには六〇~九〇日を要すると見ている。六〇日と想定した場合、肉の保存などで生じる損害は一億八〇〇〇万ドルに及ぶとされているが、それ以上長期化すれば、世界貿易機関(WTO)へ提訴という声も出ている。
ちなみに、ブラジル産牛肉は二五%が輸出され、EUはブラジル輸出量の三〇%近くを購入。一日フォーリャ紙によれば、二〇〇六年の場合、EUの輸入牛肉の六五・九%がブラジル産だった。
ブラジル政府は二月十五日までに農場毎の報告書をまとめてEU側に提出し、説明の予定。また、EU側は二月二十五日に視察団再派遣の予定となっている。