ニッケイ新聞 2008年2月7日付け
十二月十三日付け本紙で専門職が不足しており、不足が長引けば産業界の成長に水を差すことになると報じたが、四日付けフォーリャ紙は、大卒者の就職難について報じている。
フォーリャ紙記事によれば、大学教育が浸透し、大卒者が増えるいっぽう、労働市場はそれに見合った形で拡大しておらず、自分の専攻分野で就職できるケースが減少しているのみか、就職難で、より学歴の低い人を対象とした分野に職を求める傾向が広がっている。市街地では、大卒労働者の一〇人に一人は高卒までの人を対象とした職に就いているという。
この記事は二〇〇六年の数字を基に書かれているが、〇六年に大学を卒業した学生は七三万七〇〇〇人で、一九九五年の約三倍になっている。いっぽう、同年の調査で見ると、およそ七〇万人の大卒者が販売員や受付、テレマーケティングのオペレーターなどの職に就いている。
一例として、郵便局の配達人二〇人に一人は大卒。リオ市の警備員では、五五六三人中四八〇人が大卒で、三二人は大学院卒。サンパウロ州軍警では九万三〇〇〇人のうち、三九三五人が大卒で、一二人が大学院卒。リオ市では一万二三七七人の道路清掃人の三七人が大卒ともいう。
これらの数字を背景に失業率や所得を考えると、一月に発表された六大都市の失業率が十二月時点で七・四%(〇六年十二月は八・二%)で、平均実質所得は一一六三・九〇レアルという数字の中に、大卒者が進出してきたことで職を得ることの出来ない低学歴者が増えてきている可能性が指摘できる(〇六年の大卒者の失業率は三・八%)。また同じ職種で比べると、大卒と高卒とでは給与にも一七二%の差が認められるという。
低学歴者の雇用状況についてのデータがないため比較できないが、高学歴者の増加による雇用地図の変化に、採用担当者らからは、働く意欲のない労働者の増加や低学歴でも適任者が選から漏れる可能性、また、大卒であることが質を伴っている保証にならないといった指摘もある。また、採用試験を受けて採用されても、条件の良い職を見つけて短期間で辞めてしまうといった弊害も出ている。
実績の上がっていない法学部の実質閉鎖のいっぽう、私立大学では二年間に学生数三四%増の報が一月に、連邦大学定員を五年で二倍にとの報が一日付けエスタード紙にあったが、大学乱立で教育の質がまた落ちたと現場からの声が出てこないよう、願わされる。
質を伴った大学教育の拡大とそれを受け止められる社会、産業構造の構築は時間がかかりそうだ。