ニッケイ新聞 2008年2月7日付け
【神戸新聞】戦前、神戸市中央区元町通六にあり、ブラジル移民らが渡航前に宿泊した「岩国屋旅館」の外観や室内の写真が入った絵はがきが見つかった。新築を記念して、大正初期に発行したとみられる。今年は、一九〇八年に初の移民船「笠戸丸」が神戸から出港して百年。移民宿内の写真は珍しく、ブラジル移民史の貴重な資料といえそうだ。
岩国屋旅館は一八九七(明治三十)年創業で、現在の神戸中央郵便局の北にあった。戦前の元町周辺には十数軒の移民宿があり、ブラジルやハワイへの移民が宿泊し、従業員が渡航手続きも代行した。衛生や料金の面で問題ある宿もあり、後に国立移民収容所(現在の旧神戸移住センター)が開設される要因になった。
近代史研究家の安井裕二郎さん(51)=芦屋市=が一月二十七日、収集家らでつくる「日本絵葉書(えはがき)会」の交換会で見つけた。
絵はがきは二枚。一枚は新築間もない木造三階建ての外観と創業者の桑田伊助氏の顔写真で、移住を控えた宿泊客らが並んでいる。もう一枚は、移民船の絵が飾られた玄関や婦人室、奥座敷庭園の三枚の写真を組み合わせたもの。いずれも「岩国屋旅館 新築記念」と記されていた。
安井さんによると、移民宿の内部写真はほとんど残っておらず、岩国屋旅館についてもほとんど資料がないという。
安井さんは「移民宿については未知の部分も多く、内部の写真は当時をうかがう上で貴重な資料。ブラジル移民百周年の記念行事などで歴史資料とともに展示したい」と話している。