ニッケイ新聞 2008年2月9日付け
今月十三日のブラジリア公演を皮切りに、国内十都市で十一公演を行なう『劇団1980』(柴田義之代表)の団員ら六十人が七日にブラジル入りし、柴田代表、金守珍氏(演出担当、新宿梁山泊代表)、韓国の音楽家、元一氏(音楽担当、国立韓国芸術総合大学教授)、山田ひとみ団員ら四人が案内のため、同日来社、多くの来場を呼びかけた。上演作品は「ええじゃないか」。カンヌ映画祭グランプリ受賞監督・故今村昌平監督『ええじゃないか』のシナリオを、同劇団主宰の劇作家・藤田傳(でん)氏が、演劇用に脚色、舞台化したものだ。ブラジル日本移民百周年記念事業の一環。
『劇団1980』は藤田傳氏を中心に、一九八〇年に創立。〇四年には、ブラジル・パラグアイで素劇「あゝ東京行進曲」を公演、各地で大きな反響を呼んだことは記憶に新しい。
「多くの非日系の方にも見てもらい、非常に好評だった」と振り返る柴田代表は、帰国してすぐ百周年を記念したブラジルでの再公演の構想を練ってきた。
「ええじゃないか」とは、江戸末期に東海道や畿内を中心に全国に波及した民衆運動。仮装で「ええじゃないか」と連呼しながら踊り、集団で町々を練り歩いた現象で、故今村昌平監督により、八一年に映画化されている。
演出家の金氏は、今回の公演を「絶望の中に希望を見出す一大叙事詩」と位置付け、「移民の方の心にも通じるものがあるのでは。楽しんで観てもらいながらも、何かが残るものにしたい」と力を込める。
なお、舞台音楽には、韓国の国民的音楽家、金徳洙(キム・ドクス)の弟子でもある元一氏(ウォン・イル)が担当。自身が主宰する伝統韓国音楽グループ、風の峠(パラムコツ)のメンバー六人が生演奏、日韓文化融合を具現化した舞台ともなる。
金氏は、「日本街だったリベルダーデも東洋街になったと聞いている。百周年を機にアジアの視点で見た舞台を楽しんでもらえたら」との提案、韓国コロニアにも来場を呼びかける考えだ。
【公演地と日程】
二月十三日=ブラジリア(ナショナル国立劇場)、十六日=ベロ・オリゾンテ市(セジミナス劇場)、二十日=リベイロン・プレット市(ペドロ・セグンド市立劇場)、二十三日=ミランド・ポリス(弓場農場)、二十七日=ロンドリーナ(オウロ・ヴェルデ劇場)、二十九日=マリンガ(カリル・ハダッヂ市立劇場)、三月二日=クリチバ(グァイーラ州立劇場)、五日=フロリアノポリス(アデミール・ローザ州立劇場)、九日=サントス(コリゼウ劇場)、十二、三日=サンパウロ(SESCピニェイロス)。
入場料は十レアル(十二歳以下、六十五歳以上は五レアル)。詳しくは各地公演会場まで。