ニッケイ新聞 2008年2月14日付け
ルーラ大統領は十二日、アマゾン熱帯雨林の保全モデル設定を訴え、聖域化を否定した。アマゾンを人類の聖域とする狂信的位置付けに反論し、同熱帯雨林のためにブラジルの経済発展を妨げてはならないと喝破した。ステファネス農相は、ロウセフ官房長官と不法伐採について話し合う意向を表明した。森林法は一九九六年、農場内の森林を八〇%保存し伐採を禁じた。それ以前の伐採取り扱いについて、両相は検討する。
アマゾン熱帯雨林の伐採進行が論議をかもす中、ルーラ大統領は同地域在住の生産者や消費者のために、消費財の供給と雇用創出を確保しながら生態系の保護も両立するシステムを考案すべきであると述べた。仏領ギアナを訪問中の大統領が、アマゾン聖域化のため地域住民を犠牲にすることは反対した。
同熱帯雨林地域には、二千五百万人のブラジル人が生活している。彼らの口から食料と生業を取り上げ、人並みの生活を禁じることはできない。他地域のブラジル人と同じように、テレビも自動車も欲しい。最低限の生活を営むため消費財の供給は欠かせないと、大統領は語った。
アマゾン熱帯雨林は、環境保全と経済発展の両立を可能とするシステムの立案を人類に要求している。アマゾンの生態系については、まだ解明されていない多くの事実が秘蔵されている。同件についてフランスのサルコジ大統領も、一緒に考えることを約した。
農相は十二日、農務省技官や生産者代表、地方自治体代表、マット・グロッソ州の国会議員らを招集し、経済発展と環境配慮が両立する「環境の産業化案」の立案を求めた。また官房長官に座長として同案のフィクサーを依頼した。
不法伐採への妥協もないが、生産者の立場で検討すると農相はいう。森林法によれば、農場の二〇%しか農耕に利用できないので同法の見直しが必要だと述べた。法整備が不完全なために、不法伐採への特赦などと多くの誤解を生んだのも事実だとした。
熱帯雨林指定地域の農場は毎年、農地改革院(INCRA)へ耕作状況と営農計画を報告登録することになっている。しかし、INCRAには、環境保全をも管理する法的権限も構造もない。ただ営農資金の融資で生産者を制御しているだけが現状だ。