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サンパウロ市で進むドーナツ化現象=郊外へと広がる人の波=12年で176%成長した地区も

ニッケイ新聞 2008年2月19日付け

 サンパウロ市では、中心部の人口がサントス市一つ分減少し、郊外ではガリューリョス市と同じくらいの人口が増え、ドーナツ化現象が起きていると十八日のフォーリャ紙が報じた。
 大都市で起きるドーナツ化現象は世界中いたるところで見られるが、その規模や原因に差こそあれ、社会的問題の一つであることは変わりがない。
 サンパウロ市の場合は、中心部にあった工場移転時に、経営者や従業員などがこぞって移動したケースなど、五四地区で一九九六年から二〇〇七年にかけて四四万八九六人の減少を記録。一方、北部、南部、東部の四二地区では、同期間中に一二三万四七七〇人増加した。
 もちろん、工場等の移転だけではなく、交通網の整備が進んだことなども、中心部から周辺部への人口移動を可能にしたのだが、このドーナツ化現象によって生じる問題にはどんなものがあるのか、そのいくつかを挙げてみたい。
 人口移動の呼び水の一つは、人口密度が低く、土地が安いこと。一九六〇年代からサンパウロ市政府がとってきた大衆住宅提供は渡りに船だったといえる。しかし、急速に広がった周辺部、特に貧しい地区の居住地は、上下水道といった衛生設備の不備、ごみ収集システムの普及率が低い、交通網が完備されていないなどの問題を抱えている。また、市北部のカンタレーラ地区など、自然保護区でありながら、勝手に分譲されたり、違法建築がはびこったりしている地域もある。更に、郊外を中心部並にインフラ整備することは高経費となることも問題である。
 また、水源地に程近い所にまで工業用地や住宅地が広がることは、水源地の汚染という問題を生み、車の積極的利用が増えるといった問題もある。
 郊外への人口の広がりの傾向としては、貧しい地域への人口拡大と、人口が密集していない地域への高級共同住宅の拡大という二種類があるようだが、中心部との接点を保った形での郊外への広がりという視点にかけた、無秩序な市街化地域の拡大は、市当局にも頭痛の種。
 ちなみに、人口増加率最大のアンニャングエラ地区では一七六%で四万人余りの増加。人数増加数一のグラジャウー地区では一五万九〇〇二人で六〇・七二%の増。減少者数の一番多いのはイタイン・ビビ地区で二三・七六%の減。減少率の最高はパリーの二九・三六%で五一三五人の減。
 一月三〇日エスタード紙に発表された殺人白書地図に掲載された十万人当たりの殺人被害者十人以下の地域が、人口減少地域や人口の動きのない地域に重なっていることも興味深い。