ニッケイ新聞 2008年2月21日付け
ユバ農場の辻義基(つじよしき)さん(57)の自転車世界旅行に関する講演会が十三日正午、コチア青年連絡協議会の総会の後、行われ、約六十人が熱心に聞き入った。現在、雑誌『のうそん』に連載中の体験談が人気を呼んでいることから今回の講演会となった。
一九七五年、インド、パキスタン、アフガニスタン、イラン、トルコ、ギリシアまで自転車で旅行し、エジプトから先、スーダン、ウガンダ、ケニア、タンザニアは列車などで移動し、いったん日本に帰国して二年ほど資金稼ぎした。
「インドでは用便後に水で洗うことをおぼえ、痔が治った」「トルコは世界で一番親日国」「アフガンでは村の生活はランプだった。小学校では紙がなく、ろう石で書いていたが、人々は本当に親切だった」と三十年前のできことを、辻さんはまるで昨日のことのように説明した。
その後、七八年から自転車で北米ロスに入り、メキシコ、グアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、パナマ、エクアドル、ペルーからアンデス山脈越えをして、アルゼンチン、パラグアイからブラジルへ。パラナ州を通ってノロエステ線にあるユバ農場、サンパウロへ抜けようと考えていたが、そのまま居着いた。
「中南米のどこでもいいから土着したい」との気持ちを持って、各地を歩いた。メキシコの榎本植民地では日本語は通じなかったが、「ここで農業をしてのんびり暮らしても良いと思ったが、決定的な理由がなかった」ので旅を続けた。また「グアテマラのインディオは日本人と顔がそっくり」と語ると、聴衆は驚きの表情を浮かべた。
ユバ農場については「働いても給料がもらえないし、ヘンなところだと思った」と第一印象を語った。二回の破産などの紆余曲折を経ながらも七十年余も続いている同農場。「ユバがパラグアイにあったら、そこに住んでいた」と強い愛着をしめした。
昨年、NHKスペシャルで放送されたこともあり、現在も常時、日本からの旅行者が四~五人住みついているという。現在も続編を収録中で、六月頃には放送される予定だという。
講演を聴いたサンミゲル・アルカンジョ在住のコチア青年、伊勢脇英世さん(72、高知県出身)は「コラジョーゾ(勇気がある)だな」と感心しきりの様子だった。