ニッケイ新聞 2008年2月23日付け
中央銀行は二十一日、ブラジル史が始まって以来初めての債権国入りを達成と発表したことを二十二日付けエスタード紙が報じた。一月におけるブラジルの海外資産は、政府と民間の債務よりも約四十億ドル上回った。ブラジルは長い間、対外債務を決済できずに苦しんだデフォルトや経済不安の時代を終えたと、メイレーレス総裁が報告書で宣言。現政権の就任当初、対外債務一千六百五十二億ドルを抱えていたが、毎年少しづつ返済した。
ブラジルが債権国入りしたきっかけは、外貨準備高の増大と海外投資の結果と見られる。債権国入りによる状況変化は、リスクの格付け評価で有望な投資国として世界へ紹介されることになる。思えばモラトリアムで大恥をかき、肩身の狭い思いで国際社会を長い間しんぎんしたものだ。
これはマクロ経済政策の三本柱、均衡財政と変動制為替、インフレ目標管理の成果であると中銀が称えた。二〇〇三年から始めた債務返済で、ブラジルへの風向きは変わった。国際通貨基金(IMF)へ一千八百三億ドルも支払って債務を決済し、肩の重荷を下ろした。そのため外貨準備高は昨年、倍増した。
国内にドル通貨が溢れたのも、外貨準備の蓄積に有利であった。中銀はドルを購入し外貨準備に投じて五年、一千四百十三億ドルも貯まった。ドル購入には、為替変動制が手伝ってくれた。経済指標の好転によりブラジルは、金融危機に対しそれを受けとめる足腰の強い国となった。
手放しで喜ぶだけでなく、足元も見ろという声がある。政府の国内債務は一月、残高が一兆二千四十億レアルになった。この利子支払い分百三十四億レアルだけでもバカにならない。ブラジルの赤字国債体質は、止め処もなく新たな資金調達を要とする。
ブラジルの債権国は、長続きしないという見方がある。ブラジルが儲けたのは、他人の涙のお陰。ブラジルのような大量の資金を必要とする国が、海外へ資産を持ち出すのは、自然体とはいえないとベローゾ元財務相がいう。
ブラジルはまだ、貯蓄が少ない貧乏国の部類に属する。それが債権国入りするのは、小さな貧乏会社が無借金経営をするようなもの。それが可能なのは、米国のために先進国がホロ酔い加減だからだ。もしも米国の赤字を埋めるためブラジルで株を処分するなら、大量のホット・マネーが流出する可能性がある。