ニッケイ新聞 2008年2月26日付け
一九九二年に始まったチエテ川浄化プロジェクトは一六年間に三〇億レアルを投入して展開されたが、サンパウロ市から一〇〇キロ余りはなれたソロカバ地区の一二〇キロの区間でチラピアなどの生息が確認され、漁師たちが三月一日の漁の解禁を首を長くして待っている。
二十四日付けエスタード紙によると、魚や水鳥などの生息が確認されたのは、ポルト・フェリース・、カブレウヴァ・アニェンビの三市。六〇年代から漁で暮らすことが出来なくなっていた地域だが、河川浄化で魚が捕れるようになり、二〇〇〇家族が漁で生計を立てようとしているほか、船を準備し、観光客の到来を待つ人々もいる。
一九九二年の浄化プロジェクト開始時、チエテ川は、七〇年代末からというもの、水源に近いイタカケセトゥーバからバーラ・ボニートの貯水池に程近いアニェンビまでのほぼ全流域で、水中生物が姿を消していた。また、二〇〇七年四月のテレビ朝日では、アニェンビから四〇キロほど下ったピラポラの町で、風が吹くと白い泡が舞う光景が見られるようになり、調査に出かけた小学生が悪臭と硫化水素ガスとで倒れた一九九七年当時と、一〇年後とを比較して報道した。
この白い泡は有害物質を含んでおり、生活廃水や産業排水の垂れ流しによる水質汚濁によって生じたもの。ダムの水門や段差のあるところなどで発生し易く、悪臭と泡とが覆った町は、喘息や気管支炎など呼吸器系疾患の患者が多い。
ちなみに、産業排水の処理は進んでいるが、なかなかはかどらないのが生活廃水の処理。大サンパウロ市圏の三四の自治体中、一九の自治体で、生活廃水は垂れ流しのままだという。このため、第三期浄化プロジェクトでは、一〇年で三〇億レアルを投じ、四〇万家族への下水道の整備を行うという。
一二〇キロの流域で魚が戻ったとはいえ、他の流域での水質汚染はまだ深刻で、週に一度川を渡る牛が、具合が悪くなるという報告もある。また、サウト市でも魚は捕れるようになっているが、この地域の住民は、汚染が怖く、食べる勇気はない。
二十日のエスタード紙に、疎水工事が進行中のサンフランシスコ川で、バイア連邦大学などの調査団が四五キロ平方の地域内の調査を行った所、上流で少なくとも五〇〇羽、下流で二七〇羽の水辺の鳥が死んでおり、川の周辺で捕まえた鳥を食べた漁師が食中毒症状を起したという記事もあった。自然を壊すことは簡単でも、回復させることは容易ではないことを、二つの川は教えてくれる。