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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年2月26日付け

 「老人と海」のヘミングウエイが自裁しカジキの大物釣りなど歓楽の街として親しまれたハバナも、カストロの率いるゲリラ攻勢で親米バティスタ政権が崩壊―社会主義国家が成立すると生真面目な都市に変貌する。革命の戦士チェ・ゲバラらと闘いキュ―バの天下をとったのが1959年の2月。あれから50年―カリスマの如きカストロ氏が、健康上の理由で引退を表明し世は大騒ぎである▼キューバと米のマイアミは近い。140キロ離れているだけであり、中南米初の共産国家の成立にアメリカは動揺する。アイゼンハワ―からブッシュまで10代の大統領が「経済制裁」を続けキュ―バと激しく対立する。62年には、ソ連のフルスチョフと組みミサイル基地の創設を決定し、ケネディ大統領が激怒し世界大戦の引き金を引くところだった▼核弾頭を搭載すれば、アメリカは目と鼻の先である。これでは大統領ならずとも、怒るのがあたりまえである。それでもカストロ議長は自らの革命理論を保持する。70年代から80年代にアフリカの共産主義的色彩の強い勢力を支持しキューバの軍隊を派遣して大きな影響力を与えたのも忘れまい。さすがに―ソ連が倒壊した90年代の初めになると、かなり平穏な路線になったけれども、根底は現在も社会主義である▼この20世紀の歴史を飾るにふさわしいカストロ氏も81歳の高齢には太刀打ちできないらしく、健康を害している。チャベスやルラ両大統領も見舞いに駆けつけたが、病気は重く、あの軍服を着ての長広舌な演説は無理だし、せめて院政を敷くしかないのではないか。(遯)