ニッケイ新聞 2008年2月27日付け
俺たちの生活がかかっているーそんな思いが、パラー州タイランジアの住民を抗議行動に走らせたのは十九日。二十、二十一日の伯字紙によれば、違法伐採で押収された木材の搬出作業を阻止するために道路封鎖や火を放つなどで、国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)や州の環境局は、始めたばかりの違法伐採の監査作業などを中断せざるを得なくなった。
これに対して、連邦政府や州政府は、連警、軍警、国家治安部隊などを派遣。押収木材の搬出は二十五日、同州での監査作業は二十六日から再開と、二十六日の伯字紙が報道した。
最初に作業が再開されたタイランジアへは、軍、連警、Ibama職員ら、約三〇〇人ほどを派遣。伐採や製材、搬出などの事業認可の有無を確認し、違法業者の摘発、木材押収などを継続すると共に、製炭業者の監査も行う。パラー州当局によれば、タイランジアの伐採、製材業者は二一社のみが認可を受けており、他の六九社は無認可。違法伐採で押収された木材は一万五〇〇〇立方メートルに及んでいる。
州政府による監査作業が始まって以来、タイランジアでは八二六人の伐採、製材従事者が予告なしに解雇され、正式雇用の二九七三人も二〇一八人に解雇通知が渡されているという。また、違法木材が盛んに流通していた時には、週に一六〇レアルを稼いでいたというタイヤ店主は、「トラックが通らなくなり、先週は四〇レアルしか儲からなかった」という。
確かに、収入の七〇%は木材によるものという人口七万足らずの町への打撃は大きい。しかし、このまま違法乱伐を見逃し、アマゾンが破壊されるままにしておくわけにもいかない。
総勢八〇〇人を動員して展開される「火の弓作戦」は、監査から始まり、再発予防処置、作戦の実行された地域住民の登録といった三段階を経ることになっており、作業はまだその発端についたばかり。今回の作戦は、法定アマゾン地域九州の中でも、違法乱伐が目に余るとして先に発表された三六の自治体のみで実行されるが、一年以上はかかる作業となることは必至。常駐の監視場所を設置し、違法に取引される木材の流れを断ち切ることも含め、大掛かりな作戦の幕が斬って落とされたといえる。
もちろん、失職し、日毎の糧に窮する人々も忘れてはならない。「雇用、教育と地域発展のための代替策を提供する必要がある」と言うのは、作戦コーディネーターの一人、サンパイオ氏だが、州知事も基礎生活セットの支給を約束したという。「このままだと、強盗とかも相当増えるぞ」と警告する住民も失職して十日余り。早急な対策が必要とされている。