ニッケイ新聞 2008年2月27日付け
お手元の、もしくは埃をかぶっているポルトガル語辞書をめくり、編者の言葉を見てほしい。
最初にポ語辞書を編纂した大武和三郎の功績について触れる一節をその文中に認めることができるはずだ。
面白い話を聞いた。一九四〇年(昭和十五年)に日本で最初の「西和辞典」(村岡玄、大観堂書店)が出ているのだが、少々中身の充実さに欠けていたことから、戦前のスペイン語学習者は、大武の辞書を大いに活用していたというのである。
ちなみに次の西和辞書は、五八年(昭和三三年)の高橋正武(白水社)によるものだ。
歴史にもしー、はないが、大武の編纂がなければ、移民の苦労、そして日伯関係はどうなっていただろうか。
あまり顧みられることがなかったその業績は、波乱に満ちた人生と共に百周年を機に顕彰されるべきものだ。 (剛)