ニッケイ新聞 2008年2月28日付け
国連の専門家による人権委員会は二十六日、ブラジルが再々の勧告に関わらず治安当局による拷問や人種差別、女性への虐待などが恒常化していると初めての再査察を実施すると二十七日付けフォーリャ紙が報じた。国連人権審議会は二〇〇六年、世界の人権問題を定期的に監査するシステムを立ち上げ、ブラジルが槍玉第一号に挙げられた。委員会の手元には、NGO(非政府団体)と国連ブラジル支部、政府など三通の人権報告書がある。
上院公聴会にNGOが国連の要請に対する政府の対応が緩慢であるとする十二日付け非公式文書が提出された。公聴会に出席した国際人権統括組織の代表は、国連が調査した人権に関する百十七の質問に、政府は一問だけ答えるという怠慢振りを指摘した。
非公式文書は、ブラジルが連邦政府だけでなく地方自治体も含め、ホラばかりでなく質問にも誠意を以って答えて欲しいと結んだ。世界情勢の調整メカニズム設置を提案するブラジルは、国連人権審議会に対しても責任感を示威するよう同代表は要求した。
来伯した人権委員会が特記したのは、殺し屋集団の暗躍と留置所の拷問、超満員の留置所、留置者に対する非人道的扱い、保護区からの先住民追放など。
司法制度の改革に努力している様子は認めるが、裁判官が汚職の片棒を担いでいる報道に憂慮せざるを得ない。国連現地支部の報告によれば、組織暴力は無関係な市民にも及んでいると人権委員会は指摘。
二〇〇七年の報告には、殺し屋集団の暗躍がある。犠牲者は十五歳から四十四歳、年間五万人が消されている。犠牲者が、下層階級の黒人男性で働き盛りの年齢層であると指摘。
NGOの二十二団体は、ブラジルの問題として現実の生活に何の役にも立たない法律制度を挙げた。ブラジルは一九八八年、ラテンアメリカでは最も進んだ人権擁護法を制定したが、法の精神と適用の間には越え難い大きな溝がある。
レイス人種平等長官が、ブラジルは世界で最も奴隷制度が長期に続いた国で、人種差別は黒人が支配階級へ上れないように社会組織が構築されていることが問題なのだと述べた。黒人の差別廃止には黒人自身の意識改革が必要だという。