ニッケイ新聞 2008年2月29日付け
二十八日付け伯字紙によると、二月一日からブラジル産の生鮮牛肉の輸入中止を決めていた欧州連合(EU)は二十七日、二十八日から生鮮牛肉の輸入を再開すると発表した。
EUとの牛肉取引については、二年にわたり様々な協議が行われてきたが、口蹄疫を恐れるEU側は昨年末、肉の品質管理のための設備や環境を有する農場のリストを送るようブラジルに要求。これに対し、ブラジルからは一月に二六八一件、二月に六八三件のリストを送ったが拒否され、先週末には二〇〇件にも満たない三度目のリストを送付。このリストは二十五日に派遣されてきた査察団のメンバーも交えて検討した上、一〇六件に削られた。
今回の輸入再開発表は、このリストに残った一〇六農場の牛肉に限り、生鮮牛肉を輸入するというもの。ブラジル側は輸入再開を歓迎したものの、唐突な発表に、訝る声も聞こえている。
これは、EUの発表が、二十五日に派遣された査察団が現場視察を実施する前になされたため。農相が、「悪化したEUとブラジルの関係を取り繕い、三月にもたれるEUと中南米諸国の会議を前に、地ならしをするための決定」と言いたくなるのもうなずける。
ただ、EU内での昨年中のブラジル産牛肉の輸入は二八万七〇〇〇トンで、生鮮牛肉だけでも一九万四〇〇〇トン。ところが今回承認されたリストの一〇六農場が輸出できる牛肉は一年間で一五〇〇トン程度。ブラジル関係者は、少なくとも一〇〇〇件の農場を認めなくては昨年実績には追いつかないとしている。今後の交渉次第で一〇六農場がさらに増える可能性はあるが、どのようにしてリストの上乗せがされていくのか、明確な基準が求められている。
一方、EU査察団と時期を同じくして訪伯したのがロシアからの査察団。かつてはEU以上に牛肉の基準にこだわり、ブラジルからの出国時点での免疫検査なども要求したロシアは、今回の査察でサントスの検疫、輸出の現場も視察。自分たちの要求は満たされていると満足する一方、EUの輸入中止処置を批判。三月十一日まで滞在して二七農場を査察するEU査察団に対し、EU査察団が任務遂行出来なければ、ロシアが手伝うとまで言い出した。
EU査察団の来伯後の昼食がポル・キロのレストランだったのに対し、ロシア査察団は農相自らがシュラスカリアで肉を切り分けるサービス振りだったことは、二十六日伯字紙に報じられたが、「昨日の敵は今日の友」とは二十八日付けエスタード紙の評。