ニッケイ新聞 2008年3月1日付け
サイパン島は、若い人たちの観光地になっているが、グァム島なども昔は日本の委任統治領であり、南洋拓殖の前進基地であった。先の大戦では激戦が続き多くの日本兵が戦没し、終戦60年にあたる05年には今上天皇と皇后さまが、慰霊のために訪問されている。あの島にはバンザイ・クリフがあり、崖から投身した日本人の悲劇を今に伝える▼あそこの海は美しい。透明度が60メ―トルに達するところもあり潜水や釣のフアンが押しかけ賑わっている。そのサイパンで妻・一美さんを銃殺した疑いで三浦和義容疑者(60)が逮捕された。ロスで起きたあの事件を覚えている読者は多い。もう27年も昔?の話だが、多額の保険金が絡んだ「疑惑の銃弾」とし大騒ぎになったけれども、何故か日本の最高裁では「無罪」の判決があり話題になった▼ところが―ロス市警は想像を超えるほどに執念深い。あの謎だらけの妻殺しをしつこく追い続け逮捕に踏み切ったのだから驚く。名探偵・明智小五郎や金田一京介も顔負けしびっくり仰天するような頑張りである。日本の専門家も首を傾げているそうだが、これには日米の法律の違いが大きく影響していらしい。日本では時効があるけけれども、アメリカに「時効」はない▼従って、米の警察には迷宮入りした事件を扱う専門の局や課があり、名捜査官が担当することがある。今度の三浦逮捕も、こうした捜査と証拠に基づくものであろう。それにしても―あの狡猾?が売り物の三浦容疑者が「サイパンが米の自治領だとは知らなかった」と話しているとかだが、これはもう迂闊を通り越している。(遯)