ニッケイ新聞 2008年3月6日付け
【愛知県豊田市発】パネルディスカッションでは、子供代表として比嘉ロベルト・ジュニオールさん、畑田恵子さんがそれぞれの経験談を語った。日本とブラジルの往復による勉学の中断、日本の義務教育の年齢制限による苦労などを乗り越えた二人の生の声が伝えられた。
しかし、現在まで導いてくれた人々に感謝できる二人の状況は、一般の外国人児童に比べると稀な例といえる。
司会をした楓原和子さんも「二人はとてもラッキー。ポルトガル語も日本語もちゃんと勉強しないまま帰国したり、ブラジル人の多い地区をさまよったりしている人はたくさんいる」と実情を明かす。
現在、県内の三つの高校の普通科において「外国人生徒にかかる入学者選抜」という枠がある。三教科での受験、入学後の取り出し授業(別室で受ける)や支援員による補助などの支援で、中学卒業後も勉強が続けられる可能性が高まった。
しかし、ブラジル学校を卒業するだけでは高校受験ができないことや、この特別枠の対象となるには日本の小学校への編入時期に条件があるなど、誰でも挑戦できるというわけではない。
保見団地内の二校の小学校からは校長自らが出席した。定住が進んできていることで、ただ学校で勉強させるだけでなく、学力を保証しなくてはいけない、日本中の外国人が多い地域の学校同士でネットワークを作りたい、と課題が挙げられた。
保見団地内で著しく日本人の子供の数が減っていることから、年々外国人児童の割合が増しており、来年度は西保見小では新入生の六八パーセントが外国籍となる予定になっている。
このような状況で、母語話者によるサポート「豊田方式」をしながらも取り出し授業を多くし過ぎず、日本と外国を意識しない学校づくりが大切だという意見が述べられた。
二つの小学校からの進学先、保見中学校からも伊藤光隆校長がパネラーとして参加し、学校での通常授業や進路に対する取り組み、日本語能力試験が活発に取り入れられていることなどが紹介された。
また、小学校と中学校の結びつきが大切で、東西の小学校の方針を一致させることで、中学校に入学した際にもっとスムーズになる、と提案した。
地域からは、二十五年間保見団地に住み、変遷を目の当たりにしてきた日本人住民や、八割が外国人という東保見保育園に子供を入園させた日本人の親が、感想や地域ボランティアの取り組みについて発言し、団地内の日本人住人の声を代弁した。
トルシーダ代表の伊東さんが、これまで接してきた子どもたちの状況や、法律・行政の問題点を指摘し、「どうやって日本の社会につなげていくか、出口を見つけています」と訴えた。
地域の来場者は、シンポジウムの感想として「こういう活動をしていることを知ってもらうことが大切」と述べた。
シンポジウムは、前半の講演から大変盛り上がり、予定時間を押して発言が行われたが、会場に集まっていたのは、地域住民よりも保見以外の学校関係者や教育に携わる人が多いように見られた。注目は受けているが、団地内部、特に外国人からの動きが少ないようだった。(つづく、秋山郁美記者)
愛知・保見団地でシンポ=「外国人児童生徒の教育」(上)=100人以上が熱心に参加=3NPOが呼びかけ主催