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「100周年」の年=幕開けしたが…=デカセギは祝典気分じゃない?!=「母国から無視されている」=イシさんが在日社会を代弁=日本の月刊誌百周年特集で

ニッケイ新聞 2008年3月7日付け

 武蔵大学社会学部准教授のアンジェロ・イシさんが、月刊『オルタ』一月号(アジア太平洋資料センター発行=東京=)の特集「ブラジル移民100年―デカセギ20年」で、「日系ブラジル人30万人は新しい日本文化を発信する」と題した記事の中で、祝賀ムードに湧く日系社会への別の見方を示した。
 ブラジルでは、年初から官民上げての百周年関連開幕イベントが続いている。「本当はその一部であるはずの三十万人の在日日系ブラジル人たちは、無視され、忘れさられ、取り残されている。共に気持ちよく祝える記念祭でなければ、僕ははっきりって意味がないと思うのです」。
 日本では〇七年、真面目に働いていたブラジル人夫婦が、静岡県袋井市に家を建てる土地を買おうとしたら、自治会が不動産会社に圧力をかけてストップさせたことがあった。イシさんは「情けないし、許せないし、許せない以上にやるせない気持ち」と強い憤りを示し、「なぜ彼らが地域社会に居場所を確保できないのか」と問いかける。
 対する自治体の人たちは「最近は、日系ブラジル人による犯罪報道が増えているから」と反対した理由を説明しているという。イシさんは「そういう日本人の意識をどう改革するかが課題です」と投げかける。
 「一歩出て相対化しないと分からないような息苦しさ」が日本にはあるという。「肩書き社会で、どこに所属しているかが異常なまでに人間関係を規定しているといったことも、ブラジルから来ている人たちからすれば、非常にやりずらい、生きづらい、付き合いづらい社会だと感じるところだと思います」。
 さらには「日本人自身にとっても、今、それは社会の閉塞感や生きづらさとして感じられているのかもしれませんが」と指摘する。
 「そのような状況を無視して向こう(ブラジル側)でお祭り騒ぎをするということは、すごくアンフェア(不公平)だと思いますね」とばっさり切り捨てる。
 日本社会との橋渡し役にはバイリンガルの人材の重要性を強調し、彼らが日本におけるブラジル社会の発信力を担っていくと期待している、という。
 その他、同特集にはサンパウロ市在住の記録映像作家・岡村淳さんが移民を撮り続ける理由を綴った「人間、いかに生きるのかー移民の人生を追いつつ考える」、首都大学東京都市教養学部教員の丹野清人さんがデカセギ派遣の実態を分析した「越境する雇用システム」、静岡文化芸術大学の准教授の池上重弘さんが日本政府の外国人政策のあり方に問題提起した「共生への『歩み寄り』は可能なのかー在日ブラジル人と『統合政策』の行方」なども掲載されている。定価六百円、注文はalter@parc-jp.orgまで。