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冴木杏奈タンゴコンサート=サンパウロ市=情熱の調べに満場の喝采=「ダイナミックで官能的」

ニッケイ新聞 2008年3月12日付け

 デビュー二十周年を記念して世界各地で公演しているタンゴ歌手の冴木杏奈(さえき・あんな)さんが九日午後六時から、日本ブラジル交流年実行委員会の公認事業の一つとして、コンサート「ブラジルであなたと出会う」をサンパウロ市のSESCヴィラ・マリアーナでおこなった。
 約六百席の観客席は一杯、八割近くを日系人・日本人が占めた。情熱的なメロディーとともにスペイン語、日本語で表現される迫力ある抒情の調べに、会場は喝采の嵐だった。
 前半部、浴衣姿で登場した冴木さんは、「雨」「朧月夜」「中国地方の子守唄」「百万本のバラ」など、タンゴにアレンジした日本の歌曲を、情感たっぷりに歌い上げた。
 同公演のために結成されたカルテットは多国籍編成。バイオリンはアルゼンチン人、バンドネオン奏者はウルグアイ人、コントラバスはブラジル人、ピアノはブラジルで音楽活動を続ける日本人の矢崎愛さん。
 矢崎さんは「赤とんぼ」「さくら」をタンゴアレンジで独奏。続けて真っ赤なドレスに着替えて再登場した冴木さんは、「シン・パラブラス(言葉もなく)」「ラ・クンパルシータ」など、タンゴの名曲をダイナミックに歌った。
 さらに昨年のヴェネチア映画祭で、金獅子賞を受賞した李安(アン・リー)監督の最新映画「ラストコーション」の挿入歌「ドンデ・エスタ・ス・コラソン(あなたの心はどこに)」を披露。それぞれスペイン語の歌の間に日本語の「語り」が挿まれ、会場はその表現力に惹きこまれた。
 公演後、来場者の浜口洋さん(63・一世)は「ダイナミックかつ官能的だった」と称賛。非日系のシミオニ・セルジオさん(63)は「本場アルゼンチンのタンゴに東洋の要素が盛り込まれたまさしくプロのコンサートだった」と絶賛していた。また熊井邦子さん(64、一世)は「冴木さんのスタイルがとてもきれいでした」と笑顔だった。
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 「アンコールのときに会場から合いの手が自然に沸きおこって感動しました」――。冴木さんは十日、ニッケイ新聞を訪れ、初のブラジル公演の感想を笑顔で振り返った。「この機に移民の歴史を勉強したい。またブラジルで公演したいですね」。
 冴木さんはこの日、ブラジル・ニッポン移住者協会(小山昭朗代表)やNGO団体オイスカ・ブラジルが主催する植樹キャンペーンのため、ニッケイ新聞ビル内に記念植樹をした。その苗木は後日、十万本の森作りが計画されているサンパウロ市チエテ川沿いのエコロジコ公園内に植え替えられる。
 冴木さんは十一日、次の公演地であるドイツに向かった。