ニッケイ新聞 2008年3月20日付け
米州機構(OAS)は十八日、ブラジルの音頭でコロンビアによるエクアドル領土内のFarc(コロンビア解放前線)掃討作戦は、侵略であり許されざる行為として決議したと十九日付けエスタード紙が報じた。OASは米政府による「Farc即テロ組織」の位置付けを退け、ブラジル代表の主張「Farcはテロのようなことをしたが、テロ組織ではない」を取り入れた。ラテン・アメリカ諸国の圧力により決議文から、テロ対策に国境など存在しないとする米政府の主張は削除された。
ラテン・アメリカ諸国は、米国ドクトリンの「国家の安全保障を脅かす組織に対する先制攻撃論」を南北アメリカ大陸に打ち立てることへ拒絶反応を示した。OAS加盟各国は十八日早朝、決議に署名し米国を孤立させた。
米代表は、決議にコロンビアのFarc掃討作戦が「正当防衛」であることを盛り込ませる意向であったようだ。米政府は同決議が、世界のいかなる国においてもテロ組織への先制攻撃を正当化する口実に使う考えであったらしい。
OAS条約二十二条では、国際関係に正当防衛を除いて一切の武力介入を禁じている。ブラジルを初めとするOAS加盟国は、米国と同盟関係にあるコロンビアが国家でもないFarcへの対策で隣国へ侵入したことに先制攻撃論の適用を断然拒否した。
エクアドル政府要求のコロンビア政府断罪は決議に盛り込まなかったが、コロンビア政府に対する侵略決議にも手加減をしなかった。米国とコロンビアは、決議に正当防衛を盛り込むことで、最後まで粘り会議は予定を十五時間オーバーした。決議後も米国は「正当防衛とFarcはテロ」で食い下がった。
米国の執拗な要求でOASは、補足文を添付した。「国家の安全を脅かす違法グループや犯罪組織、特に麻薬に関連した組織に対しては先行対策も認める」米国のアフガンやイラク侵攻とは、程遠い表現といえそうだ。しかし、決議にルーラ大統領の非武装地帯の設定案は採用されず、国境付近の警備には何も触れていない。これまで通りFarcだけが、自由に横行できるらしい。