ニッケイ新聞 2008年3月26日付け
マンテガ財務相は二十四日、消費者長期ローンへの割賦制限を撤回する意向と二十五日付けエスタード紙が報じた。「九十カ月のローンは長すぎる。三十六カ月位が限度ではないか」と思案していたが、銀行関係者と懇談の上決めるという。政府の懸念は安易なローンで過熱した消費が、インフレの原因になり現在の均衡財政を崩すこと。中央銀行が基本金利を引き上げないため、ローンで調整することに政府内でも反対意見が多かった。
例えば景気を盛り立てるため、現在の自動車生産を年間三百万台から五百万台に増産する。自動車ばかりでなく、全ての恒久財を増産させる。ローンのハードルを下げると、経済はいやが上にも過熱する。消費者は、ローンの洪水にトップリと浸かる。
不動産ローンの轍を踏むらしい。不良債券の山を前に、誰の責任かを問うてもムダだ。カネを貸した者が悪い。消費者は無知。結局はインフレにならない範囲で投資を奨励し、経済を成長率五・五%程度で勃興させるらしい。
とどのつまりは、中銀の無慈悲な通貨政策に行き着く。中銀は全国民から呪われながらインフレという化け物と戦い、高金利政策を押し立て憎まれ役を負わねばならない。中銀に八方美人は、許されない。
財務省がローンの手綱を緩めたから中銀はカネを湯水のごとく浴びせると、非常に危険な図が予想される。メーカーは、生産が間に合わないほどの大量注文で笑いが止まらない。それとも中銀は、心を鬼にして需要を押えるか。
中銀の手が届かないところで、カネが市中へ流れている。先ず政府経費の垂れ流し。労働者の所得向上とローンの普及である。インフレが化物の親分なら、ローンは化物の子分だ。しかし、子分は野放しなのに、中銀は手が出せない。親分を退治して、子分を自滅させるしかない。
ローンの肥大は債務不履行の増大を招き、銀行システムを侵食するので国家経済にとって益ではない。しかし、中銀の管理下にない。ローンには、他にも懸念すべき面がある。ローンの長期化は、個人の生活を破滅させることがある。