ニッケイ新聞 2008年3月27日付け
CESP(サンパウロ州電力公社)民営化のための競売は二十六日、期待する五企業が入札のための保証敷金十七億五千万レアルを納めないため不発に終わったようだ。競売対象のイーリャ・ソルテイラとジュピアー発電所の操業権が二〇一五年満期であるが、その後の操業権更新が不透明なので入札をけん制したと企業は表明した。競売の最低価格が六十六億レアルと高いのは、無期限操業権のサインなのか曖昧だと弁明。セーラサンパウロ州知事は、捨て値で処分しないためという。
米金融危機のために資金調達難も背景にあると、セーラサンパウロ州知事(PSDB=民主社会党)は見ている。最近政治的にも冴えない同知事は、ブラジル電力事情の将来をCESPの競売に賭けたらしい。同競売は、これで三度目の失敗になる。CESPには、傍系としてCPFLやネオエネ、ブラジル・エネ、アルコア、トラックテベルなど五社が控えている。
入札企業の指値は、一株当り四十九レアル七五センターボで発電所の操業権更新は勘定に入れてない。操業権は更新されるのか明確でないことと連邦政府が電力問題を解決済みとしたことで、企業は解釈に迷ったようだ。それで結局、見送ったらしい。
サンパウロ州知事は、操業権の期限という法的面が眼中になかったらしい。法的な問題を抱えたまま落札企業が操業開始するなら、民営化計画そのものが杜撰であったようだ。二回の不発でCESP株は、二八%下落。こうなったらサンパウロ州は、切り売りも選択肢にある。
電力公団の入札不備は、ブラジルのエネルギー問題が「眠れる森の美女」であることを物語る。操業権の更新は、サンパウロ州だけで決められない問題だ。全国で二〇一五年、全発電能力の八〇%に当る二万メガワットが操業期限を迎える。
もしも、操業権の更新がないなら、おびただしい数の工場が機能停止する。操業権とは、生殺与奪の権といえる。操業期間が更新されるなら、資金調達も容易だし入札企業のリスク・ランクも格上げされる。
操業権とは、その他のインフラを運営する全企業が操業権に関係するので複雑である。操業権の更新是非は、国家安全保障に関わるので国会の承認を要する。