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根のない木に実はつかず=高等教育は幼少教育から=生活に密着した学習経験を

ニッケイ新聞 2008年3月28日付け

 二十五日にサンパウロ市で開かれた教育討論会で、教育相から、高校の教育レベルが低いことへの懸念や成果の上がっていない大学などについての発言があったが、ここ数日の伯字紙記事を追うと、家庭や地域社会も一体となったきめ細かい教育を幼少時から行うことの重要性が浮かんでくる。
 国際的な学力テストで成績不振のブラジルだが、十四日の伯字紙によれば、サンパウロ州の四年生の八一%、八年生の九五%、高校三年生の九六%は数学が理解できておらず、ポ語についても、各学年の六〇%、六九%、七九%の生徒が、読解力不足で、作文も満足に出来ない。四則演算さえ出来ない高校三年生も七割という。
 プレハブ校舎で暑く、雨の音がうるさいなどの環境問題や、四年生までの留年がなくなった、生徒が多い、授業時間が不十分、教師の異動が多い、教師の欠勤が多い、代理教員では指導内容に一貫性を欠く、コーディネーターがいないなど、成績不振の理由には事欠かないが、改築工事中も成績を維持した例や、全日授業校六〇校で平均以上の成績を修めたのは四校のみと、反証も出てくる。
 これに対し、二十五日の伯字紙に報じられた、公立校が優秀な成績を上げている全伯で三七の市町村についての記事は、教育の基本を考えさせてくれる。
 これらの自治体で共通しているのは、自治体政府と教師、親が一体となって、子供の教育を受ける権利を大切にしていくという考え方。一人一人に即したきめの細かい指導を行おうという姿勢があり、怠けた生徒は油も絞られる。
 具体的な共通項目を挙げると、(一)生徒の理解度を確認しながらの授業、(二)指導方法を地域の学校が共有、(三)父兄、生徒も取り込んだ計画立案、(四)評価、(五)教師の重要性認識、(六)教師、職員らの継続性、(七)読解力重視、(八)個々の生徒への関心、(九)理解定着のための活動計画、(一〇)保健、スポーツ、文化、社会福祉などの分野との協力、など。
 宿題や練習問題の添削がきちんとされている生徒は成績が良いとの記事は十四日にもあったが、サンパウロ州で選ばれた学業優秀三市の一つセッテ・バーラスの場合、毎月のテスト、結果に即した補習や教師の手作り教材、半年毎に市のテストなどが特徴。教師は皆大卒。施設は十分でなくとも、宿題チェックなど一人一人に目が届いている。
 その他の地域で聞く、「学校は地域みんなのもの」という親や、「ここではすべてが教材」という教師のことばも優秀な成績の裏付け。幼児期から地域、家庭ぐるみで育てられ、生活と密着した教育を受けた子供は大きく育つ素地を持つ。根とともに、飛びたつ羽を持った子供が続出する地域は幸いと言える。