ニッケイ新聞 2008年3月28日付け
日本語教育に一千万円の大型寄付――。ブラジル日本語センター(谷広海理事長)主催する、デカセギ希望者向けに短期間で基礎会話や日本文化・習慣をおぼえてもらう速成塾。その主旨に賛同した総合人材サービスのフジアルテル株式会社(大阪市)は、創立四十五周年事業の一環として一千万円(約十七万四千レアル)の寄付を申し出ていたが、二十七日午前中に入金が確認された。谷理事長は「本当にありがたいこと。ブラジルだけでなく、南米諸国に速成塾を広める資金に活用したい」と感謝の言葉をのべた。
南米からの就労者二千人以上を抱えている同社。今回の寄付は、今年創立四十五周年を迎え、利益の一部を還元して、社会に貢献したいとの意思で行われた、と谷理事長は話す。
来伯していた同社関係者が昨年十月頃に同センターを訪れ、速成塾の概要の説明を受け、「働く人に合っている」と絶賛したという。
当初、同社からは「デカセギに対して日本で教えてくれないか」との要望だったが、資金面などの問題で断念。現在の状況で続けて行くことが決定した。
二十七日午前中に、同センターの日本側での窓口になっている、海外日系人協会の免税口座に振り込まれたことが、メールで確認された。「四、五日中には、ブラジルに着くでしょう」と谷理事長は嬉しそうに話した。
寄付金の使い道は、現在はブラジル国内だけにある速成塾を、アルゼンチンやパラグアイ、ボリビア、ペルーなどのデカセギが多い南米諸国の日本語教師に教えて、速成塾を広めていくことに使用する予定。
谷理事長は今回の寄付金に対して「本当に嬉しい」と高揚した様子で話し、「もっと理解者を増やせるように今まで以上に努力していきたい」と語った。
過去、速成塾に対する寄付金は、日本からは百社ほどが免税寄付を利用して約二千三百万円を、ブラジルからは十社ほどが、約一万レアルを寄付している。
速成塾=6回目の教師研修が終了=塾申し込み各地に広がる
ブラジル日本語センター(谷広海理事長)が実施する、訪日就労希望者向けの短期日本語講座「速成塾」の教師研修会が、二十一日から二十六日までの六日間同センター内で開催され、最終日には、六回目の修了式が行われた。
今回はパラー、ペルナンブッコ、アラゴアス、南マ州、ブラジリア、パラナ、サンパウロ州内から十八人が参加し、同塾独自の教授法を学んだ。今回の研修会で教師は合計九十七人になった。
昨年速成塾に申し込んだ生徒は二十一人だった。今年三月現在で、サンパウロ州を中心に、マットグロッソ州などから三十四人の申し込みが来ている。
谷理事長は修了式で、六日間の講習会の疲れを労いながら「町の代表になって、速成塾に対して誇りを持ってやって欲しい」と激励。その他、齊藤市美講師、本田秀子講師、山田直子JICAシニアボランティアらも挨拶した。
最後には、認定書が谷理事長の手から一人一人に渡され、参加者は感慨深げに受取っていた。
パラナ州カスカベルから参加していた上村力男さん(39、二世)は、デカセギ経験者に教えたことがある。「自分で教材を作っていたが、とても訪日希望者対応の教材にならなかった。模索していた時に速成塾の話があり、『これだ!』と思って参加した」と理由を話し、「教材やシステムが本当に素晴らしくて、勉強になった」と嬉しそうに語った。