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ストレス社会の被害者=乗客満載のバスをパンク=たわいもないことで殺人も

ニッケイ新聞 2008年3月29日付け

 リオ市のデング熱患者は受診までに六時間待たされるというが、毎日のニュースにも、渋滞に巻き込まれたり、バスに乗りそこなったりと、ストレスにさらされている人々の例が多い。
 二十八日の伯字紙が報じたバスをパンクさせた青年もその一人。サンパウロ市南部のM・ボイ・ミリンで、二十七日も朝の五時頃バス停についたLは肉屋の店員。一時間二十分待つ間に満員で乗れなかったバスが三台。やっと来たバスにも待ち構えた人々が押しかけ、自分は乗れそうもないと思った時点で、自制心を失った。
 以前、バスに乗れずに遅刻して解雇された経験もあり、あせり、いらだっていたLは、もう完全に遅刻という状況で暴走し、所持品のナイフでバスの後輪、次いで前輪のタイヤに切りつけてパンクさせた。その場で逃げたLを、腹を立てた乗客が追いかけ、殴り飛ばしたという。交通事情の被害者であるはずのLが、加害者にもなってしまった例といえる。
 同日正午頃には、ルス地区の交番近くで道をふさがれたために接触事故。当事者同士が車外に出て口論となり、一方を他方が追いかけ、殴る、蹴る。今回は警官が割って入り、ケガだけで終ったが、同様のケースで死者が出ることも多い。さかのぼれば、のろのろ運転で我慢できなくなった運転手が他の車の運転手らを射殺した例などもある。
 また、南リオ・グランデ州のノヴォ・アンブルゴでは二十七日、十六歳の青年が昨年末から十二人を殺したと自供。うち六件は裏づけが取れたというが、二十四日に三十九才の男性に二十発を浴びせて殺した理由は、耳に平手打ちを食らったから。そのほかも、妹を好きになったからとか、恋人におべっかをつかったからなど、他人から見ればたわいもない理由での殺害ばかりだが、後悔の様子もなく、あと三人殺す予定だったとまで話したという。
 他にも、週末に、バールでビールをひっくり返された警官が銃を取りに自宅に戻り、冗談だと思って残っていた青年を射殺といった事件など、信じられないほど簡単に自制心を失い、人の命を奪ったりしている。
 他人の考えは受け入れられないし、自分さえ良ければOKで、他人の迷惑や痛みがわからない。暴力事件などの報道で麻痺した感性に様々なストレスが加わり、自制心を失うなど、ストレス耐性をなくしつつある現代人は皆、ストレス社会の被害者といえる。
 渋滞でイライラする時にはストレッチや音楽鑑賞をと呼びかける学者は、状況の虜にならずにリラックスできる方法を身につけることが大切とも。精白糖の取りすぎで脳がジャム化するといい、家庭内暴力などは食生活から指導する例もあるが、現代は食、住、労働などすべての環境が病んでいるのかもしれない。