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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年4月2日付け

 日本は、世界で飛び抜けて老舗が多いそうだ。江戸時代はおろか、創業が一四〇〇年代の室町時代にまで遡る会社がある▼わが日系社会はどうか。日本人が百年前にブラジルにやって来て、主として脱農業した人たち、あるいは日本から企業そのものが、数百進出して来て、この地で創業したが、現在のところ、もちろん百年続いているところはない。一族経営なら三代がいいところ、年数からいえば、八十年に達した会社はあるまい▼老舗が多い社会(国)はどんな社会なのか。研究者によれば、侵略されたことがない、内戦も少ない、おカミ(政府)が信用するに足る、もっと細かいことをいえば、手を汚すことを厭わない人が多い、またそういう人が尊敬される、そういう社会では、盛業が長年月にわたっている会社が多いという▼この研究・調査が正しいならば、偉い人が絶対的といっていいほど掃除をしないこの国には老舗が少ないことになる。そして、この国にどっぷり浸かった(浸からざるをえなかった)日本人移民も、母国に老舗が多いからといって、同様には発展しなかった▼その代わりというべきか、しゃにむに働いた創業者の子孫は高学歴をつけてもらって、他の分野に羽ばたいてきた。二代目、三代目は、医師、弁護士、高級官吏などで高給を食んでいる。「会社は(存続が能でなく)売って儲ける」といった風潮すらある現代▼日系企業が二十一世紀において、会社存続の面で新たな歴史をつくれるだろうか。(神)