ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 官房室のIT機器押収=連警、核心へ迫るか=官房長官の体面修復に専心=警察国家の印象払拭で苦心

官房室のIT機器押収=連警、核心へ迫るか=官房長官の体面修復に専心=警察国家の印象払拭で苦心

ニッケイ新聞 2008年4月10日付け

 連邦警察は八日、官房室に据えられていたラップトップ五台とコンピューター一台を押収した。ジェンロ法相から「捜査は漏洩に限定」と命令されたが、前大統領の機密費に関する詳細文書(ドシエー)を立ち上げた日時を調べるためとされる。IT機器は、連警の鑑定で固定ファイルを分析する。誰が機密データを開示し、データでドシエーを作成したかを解明するという。
 連警が大統領府へ捜査介入したのは前代未聞のことである。機器押収ばかりでなく、ドシエーが作成される背景について官房室のシステムについて事情聴取を行った。機密データの複雑な開示法を知っている職員を洗い出すためだ。
 機密ファイルから誰がデータを開示し、ドシエーの作成に使ったか分かる筈という。開示した時間と上司の到着時間、情報漏洩時間との照合を行う。政府が捜査は漏洩限定というが、手足を縛られた捜査などあり得ないと連警はいう。火事の原因を解明してはならないというのか。
 ドシエーの作成に携わった職員から、何の目的で誰の命令かを聴取する。同時に、作成動機は汚職のような不正行為も含まれるかなど。法相の「捜査は漏洩限定」が舌の乾かぬうちに思わぬ方向へ進んだことで、政府の方針に変更はないと法相は弁明した。
 連警が政治警察なら、ジアス上議(PSDB=社会民主党)も捜査範囲に入る。機密ファイルを所有し公開した張本人だから。連警は漏洩という犯罪と認められたことしか捜査しない。漏洩以外は、政治論争なのだと抗弁した。
 ドシエーを表ざたにしたくない政府が連警の介入を容認したのは、ロウセフ官房長官の体面修復で苦肉の策といえそうだ。バストス前法相は、政府の法に抵触する失策を尻拭いしてくれた。今度は、ジェンロ法相の腕の見せ所。先週までの報道では、ブラジルが警察国家の印象を与えた。
 しかし、疑問がある。与党の聖域無視が公然となった今、野党はルーラ大統領の機密を盗み、なぜマスコミに流さないのか。同様の事件が、二〇〇六年にもあった。連警が介入したが、真相発表はなかった。政府は無関係とする声明を、国民が真に受けて幕を閉じた。政府がこれで味をしめていたなら、再度この手を使うに違いない。