ニッケイ新聞 2008年4月12日付け
連邦警察による詳細文書(ドシエー)の漏洩捜査が図らずも官房室のジルセウ派とジウマ派の確執に発展しつつあることが十日、露呈した。問題は最初、誰が議会へ同データを渡したかでもめた。疑惑の渦中にある官房長官側近多数の中から、官房室の総務担当ピーレス長官に白羽の矢が立った。同長官は在野時代のPT(労働者党)で汚れ役から上り政府高官を歴任し、ジルセウ前官房長官の腹心となった人物だ。
連警捜査と平行して、官房室ではドシエーに関係した高官会議が開かれた。この出席者の誰かが、データを議会の野党議員に手渡したのだ。主君ロウセフ官房長官の政治生命を守るために「代替の首」を差し出したといえそうだ。
官房室の舞台裏は、ジルセウ派とジウマ派で交錯している。ジルセウ派はルーラ大統領が政権獲得をする前から、PT(労働者党)の縁の下で爪に火をともしてきた仲間だ。新参者のジウマ派に、大きな顔をされたくない意地がある。
ジウマ派は、官房長官が大統領の愛顧を得たことで次期大統領選に賭けている。二〇一〇年に天下を取ってしまえば、ジルセウ派など屁の河童である。今週は、これまでのうっ積がピーレス氏に集中した。同氏は、ワウドミロ・ジニス氏とともにPTの汚れ役を担った人物である。
官房長官の右腕エレニッセ・ゲーラ女史は、辣腕の弁護士でジルセウ派。しかし、相変わらず情報収集担当として話題の人物だ。大統領府はドシエー問題といっしょに、ジルセウ派を政府から粛清しようとしている。ドシエーなるものは、野党が官房室から盗み出したものという。
官房長官の言葉を借りるなら、官房室にスパイがいてコンピューターを密かに操作した。これから「忍び狩」が始まる。容疑の目は、ピーレス氏の補佐二人に向けられた。二人とも坊主の袈裟として、証拠もないのに葬られそうだ。
プラナウト宮の地下ファイル室から前大統領と夫人の私費一覧表を開示したのは、ピーレス氏の命令に従ったこの二人である。官房室ではファイルの開示と内容の取り扱いについて会議を開き、続いて閣僚会議も行われた。それが野党の逆りんに触れ、CPI(議会調査委員会)設置につながったようだ。