ニッケイ新聞 2008年4月12日付け
国連の地域代表が十日、食糧高騰を国際問題の新たな焦点として指摘したことで、食糧大国ブラジルの存在が大きく浮かび上がっている。ブラジルはインフレの脅威にさらされながら、コモディティの高騰で経済的に潤っている。
ルーラ大統領は国連で「貧乏人の胃袋は、金持ちの胃袋より大きいから沢山食べる」といった。食糧高騰は、ブラジルにとって朗報だ。食糧危機などブラジルでは、朝飯前の問題であると大統領が豪語した。
ブラジルには八億五千万ヘクタールの遊休地があり、四億ヘクタールは可耕地だ。貧乏人は何がなくても食べ物があれば、最高に幸せ。ブラジルには、それがあるといった。
人権関係のNGO(非政府団体)は、食糧高騰が飢餓撲滅運動を無力化するとし、G8が同件を議題に取り上げるよう要請した。ブラジルの主産業であるエタノールや米国のとうもろこしエタノールが、食糧高騰の元凶というのだ。
ブラジルのインフレは四・五%で、元凶はフェイジョンだ。しかし、九十日あれば、種をまいて収穫できるとルーラ大統領が説明した。エタノールが食糧高騰の元凶とか「食糧か燃料か」という発想は、愚の骨頂であると訴えた。
G8は、食糧高騰が金融危機とクレジット後退に相乗と見ている。FRB(連邦準備制度理事会)は、米国の景気回復のため政策金利の引き下げに踏み切った。これも食糧高騰に拍車をかける原因という。中国やインドのような大人口を抱える国は爆食が進み、食糧価格の値下がりはしばらく見込めないようだ。
中国やインドなどの途上国は、先進国よりも食糧を大量消費するうえエネルギーも大量に消費する。この流れは不変。食糧危機を避けるには、燃料効率を上げること。そのため国際的な対策が必要と国連はいう。温暖化現象のため国中水浸しに怯える国と食糧危機に怯える国とがある。