ニッケイ新聞 2008年4月17日付け
リオ市で勢力を持つ犯罪者グループはいくつかあるが、市内北部のファヴェーラ・ヴィラ・クルゼイロはコマンド・ヴェルメーリョが支配している地域で、昨年来、同グループの武器や麻薬の隠匿場として当局が目をつけていたこのファヴェーラに特殊部隊が乗り込んだ。
十六日伯字紙によれば、十五日朝始まった作戦は、住民から、デング熱にかかっても「バリケードが邪魔で病院に行くのにも困難」といった訴えがあったことへの対応と、逮捕状が出ている十五人の麻薬密売人らを捜索するため。
朝九時に複数のルートからファヴェーラに突入した特殊部隊約百人は五分後には主だった地点を制圧。その後もあちこちで銃撃戦が展開され、隣接したファヴェーラでの銃撃戦での死者を含め、投降せずに抵抗した九人を射殺。十四人が逮捕されたほか、住民ら七人が負傷した。
逮捕者の中には、昨年の特殊部隊伍長殺害の容疑者も含まれており、逮捕状が出ている十五人中、二人が捕まった。また、対空用機関銃やピストル、小銃、麻薬などが押収された。
この作戦は目的を達するまで継続されるようだが、初日の成果に大喜びの軍警大佐の一人は、「軍警はデング熱に対する最良の殺虫剤」で「一匹の蚊も、生かしてはおかない」と笑いながら話したという。
デング熱に悩むリオ市ならではの表現で、日本語ならばさしずめ「社会のダニを一掃する」となるところだが、本当に軍警は「社会の最良の殺虫剤」なのだろうか。麻薬の密売や貧困を生む土壌を解消し、犯罪に走る人たちが生きていける手段をも与えてこそ問題解決と言えるはずなのに、トップに立つ者が犯罪者たちを虫になぞらえる感覚を持っている状態で本当の解決はあるのだろうか。
映画「トロッパ・デ・エリッテ(精鋭部隊)」の隊長役で、十五日夜、国内映画の最優秀男優賞をもらったモウラ氏も、警察力だけで犯罪者組織を一掃出来るという考えを批判した。
十五日には、デング対策で地域に入る保健所職員や政府の経済活性化計画(PAC)工事関係者らの障害ともなっていた十五のバリケードのうち、四つを排除した軍警だが、密売者同士や警察との抗争などで、PAC工事も思うよう進まないなど、ファヴェーラ問題は根が深い。
インターネット版の速報によれば、十五日夜と十六日朝にも何カ所かで小競り合いがあった模様で、一部の商店が店を閉じているほか、授業を停止している学校もある。十五日だけで三千人の生徒が授業を受けることができなくなった。