ニッケイ新聞 2008年4月23日付け
アモリン外相は二十一日、ブラジルがイタイプー発電所から購入するパラグアイ側割り当ての電力料金で価格交渉に臨むが、契約の見直しはないと表明したことを二十二日付けエスタード紙が報じた。ブラジルは昨年、パラグアイへ電力料金として三億七百万ドルを払った。しかし、パラグアイのルーゴ新大統領は、選挙運動中に二十億ドルを要求すると訴えていた。ルーラ大統領は、ボリビア政府の資源国有化で被ったくらいの損害をパラグアイでも覚悟していると述懐した。
ブラジルとパラグアイの間には、イタイプー発電所の建設に関わる契約書が締結されており、これまで同契約に従って電力料金の決済を行ってきた。しかし、交渉の席に臨むのはあくまで決済法についてであり、契約内容の見直しはないと大統領が確言した。
ガーナを訪問中の外相は、交渉の趣旨はパラグアイが妥当価格で、どのように電力を決済して欲しいのかを聞くだけと記者団に述べた。両国が一九八二年に締結した契約では、双方が発電した電力の五〇%を消費する権利がある。
しかし、パラグアイ側は、五%の消費能力しかなくブラジルが九五%を引き取らざるを得なかった。そのパラグアイ余剰分に対し、ブラジルは三億七百万ドルを支払った。しかし、ルーゴ新大統領は選挙運動中、妥当価格は二十億ドルだというのだ。
「両国の契約書に明記されているのに、パラグアイは何を以ってそんな不当価格を要求するのか」はっきりさせる必要がある。パラグアイは契約書や法律よりも、政治家の一言がものをいうらしい。ラテン・アメリカの大国となったブラジルが、隣の小国に手をかすのはやぶさかでないとルーラ大統領は見ている。
パラグアイはイタイプー発電所がありながら、アスンションの電力事情は最悪である。ブラジルが、送電線を引いてもよい。ボリビアのガスも、パラグアイの電気も「貧者の一灯」に過ぎない。ブラジルが大上段に構えることではないと、大統領はいう。
ブラジルが多少の損害を被るのは、大国の愛嬌だと外相はいう。しかし、ブラジルが親バカを演じることはないし、まして「餓鬼の脅し」に屈することもない。ただメルコスルを丸く治めるため、多少の譲歩は損害ではないと思っていると外相が述べた。