ニッケイ新聞 2008年4月29日付け
星野瞳(ほしのひとみ)さん(89、本名星野明、現在ニッケイ俳壇選者)の句文集『神有月』が、〇七年十二月付で発行された。後記のなかで「今、何か書いた物でも残さねば、これまで何かと世話して下さった方達に対しても申し訳ないのではと思い、その気になり、私にとって、この世で一番頼りになると信じている人の力を借りて(今回の句文集を)出すことができた」と書いている。頼りになる人とは石川ただしさん(在日本、ホトトギス同人、今回の発行人)だ。
本の内容は、巻頭、巻末に友人知人との交流の写真、「句集」「ペルーの旅」「日本の旅」、B6版、四百三十一ページ。『神有月』は、故郷出雲(島根県松江地方)の十一月のこと。日本中の神々は、十一月中休息する。だが、出雲には集まる。だから「神有り」である。二十年前、五十九年ぶりに故郷に帰った。生涯最高の倖せだったという。その思いが書名の由来のようだ。
星野さんは、戦前来伯の準二世。戦後佐藤念腹の門に入り、俳句を学んだ。早くから達者な俳文を書いてきた。肩から力を抜いた、温かみのある、俳味たっぷりの非常に読みやすい文章である。これまで、知人友人や弟子にあたる人たちの句集の推薦文を数多く書いてきたが、今度は「自身の本」である。その喜び、感激は如何ばかりだろう。