ニッケイ新聞 2008年5月3日付け
投資格付けのS&P社がブラジル国債をBBプラスからBBBマイナスへ格上げしたことでニューヨーク証券取引所は一日、ブラジル関連株に買いが殺到。サンパウロ市証券取引所が休日による閉店のため、同取引所はADRs(預託証書)を発行した。米景気の低迷で行き場を失った米投資家は、ADRsによってブラジルへ望みをかけたようだ。
ADRsを発行するブラジル企業二十社の株価は平均で二・三七%上げた。最高は、航空会社のGolが九・七二%。続いてブラデスコの八・〇一%、Braskenの七・七〇%、Vivoの六・二二%、Itauの五・七四%などであった。
株価を上げたのは、金利によって業績を左右される銀行や国内需要に密着する企業である。これはブラジル国債が格上げされたため、調達する資金の金融コストが安くなるためと見られる。
ADRとは米国でブラジルの株式を売買する場合、ブラジルにある米銀行支店に資金を預け、見返りに預託証券を受け取り、代替証券として取引をするシステムだ。その反対もある。
ブラジルのADRsが今後も上昇するかは、疑問だ。世界に広がるクレジット不安は、ブラジル株が格上げされても金融危機から守ってくれるわけではない。それから、ブラジルの総資産は、米国の総資産に連動しているからだ。
それでもS&Pの勲章は、ブラジルにとって名誉となる。過去に金融危機で九回も禊を受けたことは、一人前と認められたこと。これからは兆単位の外資がブラジルに投じられ、毎回記録を更新する。
一日の外紙は、こぞってブラジルの躍進を取り上げた。マクロ政策が的を射ったことで、資金は草木もブラジルへなびくという。ウオール・ストリートとワシントン・ポストは、ルーラ大統領が大した政治基盤もないのに、ここまで築き上げた功績を褒めちぎった。