ニッケイ新聞 2008年5月6日付け
バーゼルで開かれた国際決済銀行(BIS)の中央銀行会議は四日、景気低迷よりもインフレが愁眉の課題だと結んだ。そのような中、ブラジルが基本金利を一一・七五%に引き上げ、S&Pの格上げにつなげた。中国などで始まったグローバル・インフレへ対処したブラジルの通貨政策は正解だが、まだ未熟であるという見方が多いと五日付けエスタード紙が報じた。
食糧の国際相場を吊り上げた中国にとってこの程度のインフレは、ほんの走り。これから起きる革命的インフレの兆候のようなものだ。中国で爆食が始まったら、世界のスーパーからミルクや牛肉が消える。ドル安を前に強くなった中国通貨で、中国の食文化が変わったらしい。
中国人の肉消費が一年に一キロ増えると、ブラジルの二〇〇七年度全牛肉輸出量を食べ尽くす。ブラジルが昨年、中国へ大豆と大豆油、鶏肉を輸出した量は、中国がお金を持っているか様子を見て加減した量である。
広大な未耕作地を有するブラジルは、世界の食糧危機を救う候補地であることは明白。中国は国内の全可耕作地を開拓し尽くし、それに毎年四十万四千ヘクタールが砂漠化している。このような状態の国は、世界に多い。
ブラジルの食糧供給能力には、限度がある。まず衛生問題、それに食糧関係の外交官や官僚がいない。昨年までは、米国が人口密集地域の面倒をみてきた。それが昨年、事情が急変したのだ。
その代役が回ってきても、ブラジルにはインフラがない。中国市場は、ブラジルの常識をかけ離れている。これまでの対中国貿易は、民間ベースであった。中国は、世界の豚を半分食べる国だ。
本格的に中国へ食糧を供給するなら、政府対政府で話し合い、底なしの胃袋を覚悟する必要がある。ブラジルと中国の間には、外務省も農務省も対話がない。優先扱いがない。言質がない。歯車がかみ合っていない。