ニッケイ新聞 2008年5月10日付け
静岡文化芸術大学(川勝平太学長)=浜松市=では移民百周年を記念して、学長特別研究プロジェクトとして十月に移民写真展「ブラジルの中の日本、日本の中のブラジル~写真でみる100年、過去から未来へ~」を開催するにあたり、池上重弘教授が日系社会視察に四月二十七日に来伯し、九日に帰国した。
「学長から、景観を変えるほどの農業をやっている日系人農家を見てからプロジェクトに取り組んでほしいと言われてきました」と池上教授は初来伯の動機を説明した。
池上教授は、外国人集住都市会議アドバイザー、静岡県多文化共生推進議会委員も務めるほか、地元浜松市の世界都市化への指針となる「新・浜松市世界都市化ビジョン」案をまとめた有識者懇話会の委員長なども歴任するオピニオン・リーダーの一人だ。
このプロジェクトでは学生実行委員会(鏡田彩乃委員等)の四十人が中心になって、「移民の過去」「現在の日系人の暮らし」「在日日系人の生活」の三つの局面を、JICA、毎日新聞社、邦字紙などの協力で資料を集め、浜松に生活するブラジル人中高生との交流を通して、実際に撮影して展示する予定。
写真パネル展示と同時に、関連イベントを行い、日本人市民、ブラジル人市民の相互理解と交流を図ることを目的にする。
中でも、国際文化学科のブラジル人学生がリーダーになっている部門では、ブラジル人中高生と積極的に交流を図り、進学意欲を高める大きな動機付けになると期待されている。
池上教授は到着した翌日から、阿部義光リベルダーデロータリークラブ元会長らの協力で、スザノ、モジの日系農家や実業家、日系団体、政治家などを精力的に回った。
「だいぶ現実的なイメージをつかむことができた。日系人が地に足をつけている様子が分かった」と好感触を得たようだ。
日本の大学の中でもパイオニア的な取り組みであり、外国人との共生への具体的な成果が期待できそうだ。